はじめに読むコラム
こちらの記事は東洋医学の「基礎」となるコラムです、より理解していただくために、まず、はじめにご覧ください。
東洋医学の治療法
東洋医学の治療においては診察により確認できた「証」に従い治療原則を決定し、治療処方を選択するという流れが一般的です。しかし、治療にあたっては様々な方法があり、主な治療法は以下のとおりです。
薬による治療法
常用の内服療法
①汗法(解表法) ②清法(清熱法) ③下法 ④和法 ⑤温法 ⑥補法 ⑦消法 ⑧理気法 ⑨理血法 ⑩除湿法
常用の外用療法
①薫洗法 ②蒸気吸入法 ③塗敷法 ④熱熨法(ねついほう) ⑤敷貼法 ⑥洗法
常用される他の療法
①鍼灸療法 ②手技療法(推拿・按摩・正骨など)③放血療法(刺四縫) ④抜火罐法(吸玉) ⑤薬膳療法 ⑥気功療法
このコラムでは主要に漢方薬内服療法、鍼灸療法、手技療法、薬膳療法及び気功療法を紹介します。
薬内服療法とは
生薬を原料とし、これを水から煮出した液薬(漢方薬)を内服する治療法は湯薬療法とも言われています。東洋医学の様々な治療法の中でも主要な治療法となっています。
生薬は薬効のある動植物を乾燥させて加工したもののほか、鉱物や貝殻なども含まれます。
方剤とは生薬を治療に用いるために法則に従って複数組み合わせたものを指します。
漢方薬と言えば一般的には方剤のことを指しますが、生薬そのもののことを指す場合もあります。
中国の漢方薬のことを中薬といいますが、薬草単体で使う時には中薬、複数を組み合わせる場合は方剤と使い分けることもあります。
本来漢方薬は患者さん一人ひとりに対して、オーダーメイドで作るものですが、近年では、方剤の処方をレディメイドにした錠剤や薬液が数多く作られています。これらは「中成薬」と呼ばれています。
日本では自然の薬草(植物のみならず虫や動物も含む)を利用する薬「民間薬」「生薬」「漢方薬」という3種の使い分けがあります。
「民間薬」は薬理のメカニズムや治療のメカニズムはわからなくとも、経験に基づき昔から代々伝えられている薬草や、それをベースにした薬のことを指します。例としてはゲンノショウコ、ドクダミ、ハトムギなどがあります。
「生薬」は薬草を現代医学的に分析し、効果があると確認された有効成分を利用する薬を指します。
「漢方薬」(処方薬)は、法則に従って自然の薬草を実に巧みに組み合わせたものを指します。複数の生薬を組み合わせて効果を高め、さらに副作用が起きないよう検証された薬で、民間薬や単独に利用する生薬より効果は大きいです。また、臓腑(内臓)のどの部位に効き、どの病気に効果があるのか研究されていますが、民間薬はその解明がなされていません。
日本で考案された漢方薬が「和漢薬」と呼んでいます。
例えば、はとむぎは肌をなめらかにする作用があり、イボ取るためにはとむぎ茶として飲まれることが多いのですが、はとむぎのもう一つの作用として体を冷やす作用があり、寒がりの方には不向きなので、この弱点を克服するため、イボを取りたい寒がりの方に作られた漢方処方薬は実に巧みに暖める作用の薬物と組み合わせてあり、ハトムギの副作用を抑え、必要な効果は高めるような工夫がなされています。
参考文献
- 関口善太著.やさしい中医学入門.東洋学術出版社,1993
- 趙基恩・岩谷典学.現代中医診療の手引き.医歯薬出版,1997
- 安井廣迪著.医学生のための漢方医学【基礎編】.東洋学術出版社,2008
- 平馬直樹・浅川要・辰巳洋著.オールカラー版 基本としくみがよくわかる東洋医学の教科書.株式会社ナツメ社,2014
- 仙頭正四郎著.最新 カラー図解 東洋医学 基本としくみ.株式会社西東社,2019