中国伝統医学
中国の古代東洋哲学「黄帝内経(こうていだいけい)」由来の医学のことで前漢(BC208年~DC8)末に形成された伝統医学です。
人体に発生した病変と自然界の変化との関わり、あるいは病変自体の特徴やその経過、ならびに治療によって生じる変化などの観察を長期にわたり蓄積し、治療を基本にした独特の理論体系をもつ医学として形成発展しました。
その結果、「人体の生理・病理などの基礎概念」、「病変の発生と進行に対する認識」、「診断法と治療法」、「治療手段としての薬物の効能の認識」など、すべての分野にわたって同じ理論によって統合、構築された医学体系です。
その発祥以来、絶えず発展を重ね、次第に確固たる構造を持つようになりました。
現在では、それらを基礎にして一つのシステムが構築され、「中医学(TCM : Traditional Chinese Medicine)」として、この伝統医学の共通の基盤(世界標準)として広く普及しています。
中医学の構造
中医学を構成する要素は、基本的に他の医学とほぼ同じです。
これらは解剖学・生理学・病因学・病理学(病機学)・診断学・治療学・薬物学・処方学に大別されています。
中医学の体系は生理、病理、診断、治療の4段階に分けて考えることができます。
次の図で示される①~④がその各段階に相当します。
① 生理
人体が水穀や大気を摂取して、気・血・津液を代謝・合成し活用する過程です。
気・血・津液は五臓六腑を養って生理活動を促進したり、経絡を通して全身に運ばれ、人体を栄養したり、構成したりしています。
② 病理
病因として分類される様々な要因により、気・血・津液が障害され、正常な生理活動に異常が発生して、病的症状が発現してくる過程です。
③ 診断
治療者が病人の複雑な症状を「四診」と呼ばれる4種類の診断方法(望診・聞診・問診・切診)により診察を行い、分析・総合し、診断の最終結果である証を判断することを“弁証”と呼びます。
④ 治療
決定された証に基づいて治療原則を決定し、具体的な治療措置である中薬(生薬および方剤薬)や経穴(ツボ)などを処方することを“論治”といいます。
現代中医学
現代の中医学は西洋医学の優れた診断や検査技術などを活用し、西洋医学による診断病名に従って、体質状態・臨床症状・様々な臓器の機能状態などの違いにより中医学の弁証論治を行います。
これは中医学と西洋医学の結合であり、“中西医結合”と称したり“弁証”と“※弁病”の結合ともいわれています。
※弁病:臨床症状に対して西洋医学の病名を診断し、その病名をもとに治療すること。
参考文献
・関口善太著.やさしい中医学入門.東洋学術出版社,1993
・趙基恩・岩谷典学.現代中医診療の手引き.医歯薬出版,1997
・神戸中医学研究会.中医学入門(第2版).医歯薬出版,1999
・安井廣迪著.医学生のための漢方医学【基礎編】.東洋学術出版社,2008