COLUMN

コラム

ボディ(身体)

日本漢方の今日までの歩み

はじめに読むコラム

 

こちらの記事は東洋医学の「基礎」となるコラムです、より理解していただくために、まず、はじめにご覧ください。

 

 1⃣ 現代人に必要な東洋医学の知識

 2⃣ 現代医学・伝統医学・西洋医学・東洋医学「言葉の定義」

 3⃣ 日本における漢方の普及と発展

 4⃣ 中国伝統医学、中医学及び現代中医学の定義と構造

 5⃣ 中医学の特徴

 6⃣ 中医学診療の考え方

 7⃣ 代替医療・統合医療とは何のこと?

 

日本漢方の今日までの歩み

 

日本における東洋医学、すなわち「中国由来の伝統医学」は、1972年9月の日中国交回復以来、この数十年で多様化してきました。

歴史を振り返ると遣唐使の時代から日本は多くの文化を中国より学びながら発展させてきました。

中国の伝統医学が最初に集大成されたのは後漢の時代です。そのため遣唐使が持ち帰った「漢の医学」が、「漢方」として日本に広まり、その後、江戸時代に鎖国をするまでの間、漢方は日本においても中国の最新の漢方を吸収しながら発展してきました。

 

 

しかし、徳川幕府の鎖国政策により、中国において進歩し続けていた伝統医学に関する情報も日本に入ってくることはありませんでした。その結果、次第に日本における「漢方」は、そのルーツである中国の伝統医学とは異なる形で発展していくことになります。

また、日本が満州から中国に進出していった時代(1937年~1945年)も中国は西洋の文化に押され、伝統医学に関する情報が日本へ伝播されることはありませんでした。

第二次世界大戦後、中国では中華人民共和国が設立され、国家的なプロジェクトのもとで伝統文化の復興を目指すようになりました。この中に伝統医学も含まれており、全国各地に埋もれていた医師を集結させ、医学的成熟度の高いものを再度集大成し、これを「現代中医学」と呼ぶようになりました。さらに専門の大学教育の中で専門医を育成できるシステムも構築されました。

 

 

一方、日本においては明治維新以降の近代化の中で、「針灸禁止令」などが発令され、東洋医学が下火になった時代もありました。また、第二次世界大戦後も中国で行われたような国家レベルでの伝統医学復興のための政策が取られることはありませんでした。

その後、漢方エキス剤が薬価に収載されるようになると、本来の使われ方とは異なり、現代西洋医学的な形で薬としての漢方薬のみが広まり、「漢方」本来の医学的な内容については一層、沈滞化が進んでしまいました。

こうした経緯がある中、日中の国交が回復し、再び日本に伝わってきた「現代中医学」は、当時、日本に残っていた漢方の知識では十分に理解ができないほど質量ともに成熟した内容となっていました。

本来であれば「昭和の遣唐使」を送ってでも、日本の東洋医学界を大きく進歩させうる絶好の機会であったはずなのですが、当時の重鎮達は高齢になりすぎていたためか、大きく発展している現代中医学を取り入れようとはしなかったようです。 

前回の「日本漢方の現況」でも紹介しましたように大別すると「中医学を中心にしているグループ」、「現代医学の観点から治療の道具である漢方薬や針灸のみを利用しているグループ」、「鎖国時代に日本に取り残されて独自の路線を歩んできた漢方を推進するグループ」の3つのグループが混雑して存在する今日の日本の東洋医学界が形成されたのです。

 

 

 

参考文献:

  • 関口善太著.〈イラスト図解〉東洋医学のしくみ.日本実業出版社,2003
  • 清水宏幸.新しい医療革命―西洋医学と中国医学の結合.集英社,2004
  • 安井廣迪著.医学生のための漢方医学【基礎編】.東洋学術出版社,2008
  • 栗原 毅/中山貴弘/陳 志清/菅沼 栄/楊 暁波.漢方・中医学がわかる本.宝島社,2016

 

王 暁東

王 暁東(おう きょうとう)

現職:御幸病院 漢方研究室 主任研究員

経歴

5代続く中医学医師の家庭に生まれ、幼少の頃より家族から中医学の基礎を教わる。

1993年 河北医科大学中医学院中医学部大卒
総合病院中西医結合科中医師(中医総合科医師)として勤務                       
1997年 熊本大学医学部第二生理学科に入局、脳・免疫科学の知覚生理学を専攻
2002年 熊本大学大学院医学研究科修士博士連合課程卒 
医学博士取得(西洋医学)
2016年 南京中医薬大学中医学院に入学、中医学臨床基礎・経方(漢方)医学を専攻
2019年 南京中医薬大学博士課程卒
医学博士取得(中医学)      
1999年~御幸病院および複数の医療機関に中医師・研究員・講師として勤務

学術関係および兼職

2004年~ 中国南京中医薬大学 客員教授
2005年~ アメリカ自然医学学会 自然医学療法医師
2014年~ アメリカ自然医学研究院 研究員
2017年~ 世界中医薬学会聯合会理事会 理事
2017年~ 世界自然医学会聯合総会 常務理事
2019年~ 中国河北医科大学中医学院 客員教授
2022年~ 世界中医薬学会聯合会 経方専業委員会 副会長

© Holistic Health Lab All rights reserved.