COLUMN

コラム

漢方

現代人に必要な東洋医学の知識

身体のしくみ及び各種の養生法と予防療法

 

私たちにとって長寿と健康は最も関心の高い永遠のテーマです。

これに対して、一千年に遡る古来から、医療・食事・運動・心理・精神療法など様々な手段が使われてきました。

このような中、現代においては健康を医療者の「治す」から、自ら全人的に「癒す」時代になってきています。その主体である私たちは、自分の体のしくみを知り、多種多様な療法を十分に理解する必要に迫られています。

今日の生活習慣の変化や高齢化に伴う時代にあって、慢性的疾患いわゆる生活習慣病への対応はこれまでの西洋医学的知識だけでは不充分といえます。

誰しもの願いである健康長寿のためには養生と予防、そして、発病した際には全人的に病気を癒すことが求められます。

このためには医学療法とともに心理療法、精神療法、運動療法、食事療法、生活習慣への対応、健康や病気や死に対する考え方、対人関係やストレス解消法などを総合的に用いる必要があります。この様々な療法をうまく使いこなすためには正しい知識と方法が求められます。

現代病の予防と養生などの知識と方法は現代医学とは異なる視点で体のしくみや病気を捉える別の医学体系であり、統一と個別的考え方を基本とした東洋医学の中から習得することができます。

 

漢方医療と健康食品などの活用方法

 

 

昨今では多くの病院で漢方薬が処方されるようになっていますが、診察した医師の深い思慮に基づく処方が大変重要となります。

大学医学部における東洋医学の学習はまだ緒に就いたばかりで、専門知識の習得は個々人に任されている点が気懸りです。現代医学に比べ東洋医学の方がより治療する人の能力差がその効果に反映されるといわれています。

そこで、みなさんには初歩的な東洋医学のしくみを身につけていただくことで、医師の能力差を見分けるとともにご自身が適切な治療を受けているのかを判断できるようになっていただければと思います。

患者の目が厳しくなればなるほど、医師たちのレベルも向上するからです。

皆様が東洋医学をうまく活用できるよう自分の体質を知ることで、テレビCМなどで放映される健康食品などに振りまわされることなく、自分の体質に合ったものを選び、食事を含めてどんな点に注意して日々生活していくことがいいのか、その参考になれば幸いです。

 

中医学を日本で広めるための前提条件

 

中医学には様々な利点があるため、日本で広まることを願っていますが、実際の医療現場では理想とかけ離れていると感じることも多々あります。

伝統的な中医学を受け入れるには、西洋医学を学んだ医師も患者さんも中医学の背景にある中国の哲学的なものの考え方を理解していることが前提条件になります。

 

これをひと言で説明するのは簡単ではありませんが、中医学では人間の体は単に個々の臓器の集合体ではなく、体全体がひとつの有機体であるという考え方です。

そして疾病は生体内のバランスの乱れの結果であると捉えています。

  皆さんに何かしらの体調不良などがあった場合、中国哲学と中医学の基本的知識がなければ中医学を受診しようと思わないのではないでしょうか。

仮に受診されても「言われたことが分からない」「治療方針が信用できない」「効果の有無が分からない」など。良い医療・治療法があることを知らないばかりに病気の早期発見、早期治療さらには病気の進行や悪化を防止する機会を逸してしまうことにつながりかねません。

皆さんが「どうも体調がおかしい」と病院へ行っても「検査の結果、異常ありませんね。大丈夫ですよ。」といわれることがありませんか?患者さんは体調が悪いため受診されているにもかかわらず西洋医学的な診断がつかない、あるいは「検査の結果、異常がない」からといって問題なしということではないわけです。

中医学では、西洋医学的に診断がつかなくても『証』さえ決まればその状態に合わせた治療方針が決まります。『証』とはその人の状態(体質・体力・抵抗力・症状の現れ方などの個人差)をあらわすものです。

このため「陰陽、バランス、五行、気、血、津液、五臓六腑、虚実、外邪、内傷、経絡、ツボ」などの概念をある程度、知っておくことが重要です。

 

すべての人に必要な東洋医学

 

①西洋医学における検査で病気が認められた

特殊な難病や慢性病、東西の医学の結合で最も効果的な病気、東洋医学で苦痛と副作用が少なく治癒する病気

②体調不良にもかかわらず西洋医学検査で病気が認められなかった人

③体調不良の自覚症状がない人

早期発見、症状のない病気、感覚が鈍い人、病気予防、養生と強壮

 

漢方薬に適応する病気

 

漢方薬の多くは心身全体のバランスを調えるために自律神経系に働きかけて心身を活性化し、体質や体調を改善し自己治癒力を強化するように働きます。

このため体への負担も少なく、子どもから大人、高齢者に至るまで多様な疾患に使用することができます。

一般的にいわれている慢性的な病気や病名ははっきりしないものの体調が優れない不定愁訴的な症状には特に効果が期待されます。実際に風邪や下痢のような急性の症状にも漢方は効果があり、狭心症や心筋梗塞や癌などの重篤な病気にも漢方を補助的に用いることで症状を大幅に改善することができます。

もちろん、急性の感染症のように病原菌が特定される場合はそれに対応する抗生物質がもっとも効果があるのも事実です。しかし感染症に対する漢方治療の目標は生体側の免疫力を向上させることにあり、この治療法が優る場合もあります。

また、漢方薬の殆どが内服薬であるため、内服が困難なほど衰弱した患者さんにはまず点滴などで全身状態を改善させてから漢方治療を行います。

王 暁東

王 暁東(おう きょうとう)

現職:御幸病院 漢方研究室 主任研究員

経歴

1993年 河北医科大学中医学院中医学部大卒、総合病院中西医結合科中医師として勤務                       
2002年 熊本大学医学部医学研究科修士博士連合課程卒、脳・免疫科学の知覚生理学を専攻、医学博士取得
2019年 南京中医薬大学大学院博士課程卒、中医学臨床基礎・経方を専攻、医学博士取得       
1999年~ 御幸病院および複数の医療機関に中医学医師・研究員・講師として勤務

学術関係および兼職

2004年~ 中国南京中医薬大学 客員教授
2005年~ アメリカ自然医学学会 米国自然医学療法医師
2014年~ アメリカ自然医学研究院 研究員
2016年~ 世界中医薬学会聯合会 治未病専業委員会理事
2017年~ 世界中医薬学会聯合会理事会 理事
2017年~ 世界自然医学会聯合総会 常務理事
2019年~ 中国河北医科大学中医学院 客員教授

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