はじめに読むコラム
こちらの記事は東洋医学の「基礎」となるコラムです、より理解していただくために、まず、はじめにご覧ください。
予防にも活かせる東洋医学と西洋医学の融合
東洋医学と西洋医学ともに研究する対象は同じ人体であるということについては言うまでもありません。しかし、東西の社会制度や環境・文化、習慣などが異なりますので、国や地域によって研究者の物事の捉え方や考え方は自ずと異なってきます。したがって、選んだ研究対象や方法にも相違があり、その結果、研究結果(理論と治療の特徴)も異なるものとなっていました。
西洋医学においては様々な検査により、病気の原因を探り、手術や処方薬により効果的な治療ができる反面、患者に何らかの症状があっても検査数値や画像では異常が認められなかったり、薬などの処方により、副作用が出ることもあります。
一方、東洋医学では病名によって治療法を決めるのではなく、身体に現れたあらゆる徴候を捉えて治療します。
前述した東洋医学と西洋医学の相違から、患者の治療に当たって、それぞれを使い分ける方法もありますが、どちらかよいではなく、そういう違いがあるからこそ、東洋医学と西洋医学をうまく融合させることを提案します。
そのためには、まず両医学の特徴や独自性を尊重することで、はじめて融合することが可能になるのではないでしょうか。
例えば、一人の患者に両方の診断を行い、その上で「西洋医学だけで治療」「東洋医学だけで治療」「西洋医学を中心に東洋医学で補完」「東洋医学を中心に西洋医学で補完」のどれが適切かを判断したうえで治療に進むという方法があります。
治療のみならず予防や健康増進にも活かせます。例えば、人間ドックや健康診断では、病気を早期に発見することはできるので、年に一度の健診に加えて、定期的に東洋医学的な診察である望診・聞診・問診・切診などを受けられることもお勧めします。
ここまで述べた東洋医学と西洋医学の違いからまとめて以下のように考えます。
1⃣ ストレスや過労で身体の不調を感じる方 2⃣ 生活習慣病の予防をしたい方 3⃣ 男女ともに起こる更年期の諸症状に悩む方 4⃣ 病院での検査が一切正常でも不思議な症状で苦しんでいる方 5⃣ 身体のあちこちの臓器が弱ってきた高齢者などの方々 |
上記に思い当たる方々に、東洋医学的な健康診断もお役に立つことでしょう。
現代の西洋医学による先進的な医療と数千年の歴史がある東洋医学などの伝統医学による医療とが、それぞれの立場を尊重しながら、相互の特長を活かし、相補・補完する「統合的全人的医療」(integrative and holistic medicine)は、軽度な不調を改善し、QOL(Quality of Life)を高め、健康で長生きの方法としてお勧めしたいと考えます。
*注釈:ここでの「東洋医学」と「西洋医学」は、前回“東洋医学の視点から見た西洋医学の課題”に注釈した意味と同じです。
参考文献:
- 長尾和治編.看護のための最新医学講座 第33巻 Alternative Medicine.中山書店,2002
- 渥美和彦.統合医療-基礎と臨床-.東京:日本統合医療学会,2007