HOLISTIC HEALTH JOURNAL

ホリスティックヘルス ジャーナル

王先生から知る 東洋医学の基礎知識

東洋医学療法の紹介コラム⑲指圧療法(手技療法2)

はじめに読むコラム

 

こちらの記事は東洋医学の「基礎」となるコラムです、より理解していただくために、まず、はじめにご覧ください。

 

 1⃣ 現代人に必要な東洋医学の知識

 2⃣ 現代医学・伝統医学・西洋医学・東洋医学「言葉の定義」

 3⃣ 日本における漢方の普及と発展

 4⃣ 中国伝統医学、中医学及び現代中医学の定義と構造

 5⃣ 中医学の特徴

 6⃣ 中医学診療の考え方

 7⃣ 代替医療・統合医療とは何のこと?

 

 

 

由来

 

指圧は按摩と同様、衣服を着用したまま、手指や手のひらで経絡や経穴などを押して刺激を与え、圧による刺激で自然治癒力や回復力を高めて、不調を改善する手技療法です。

ツボを刺激し治療することから、別名ツボ療法ともいわれます。

民間療法として行われていた指圧は、「押す」ことを主体とした施術ですが、按摩の手法をベースとした導引(筋肉や関節を動かしながら体内にを取り入れる療法)や、柔術の治療法にあたる柔道活法(失神者に刺激を与えて蘇生させる療法) などを組み合わせたもので、大正末から昭和にかけて波越德治郎(なみこしとくじろう)により、その原型が確立されたといわれます。さらに、アメリカ生まれの整体術であるカイロプラクティックやオステオパシーなどの理論も加えられ、日本ならではの手技療法として確立、独自に発達し現在に至っています。

 

特徴

 

特徴は診断即治療といわれ、身体の表面や筋肉の異常を手で探りあて、そのまま指圧点(ツボ)を押し、症状の改善を図ります。

もう一つの特徴は、ゆっくりと押し、離すという動作により、刺激を身体の深部に伝えることです。

基本的な手技は親指や手掌で押す押圧操作です。触れる、押す、圧を加え続ける、離すというさまざまなやり方で行われます。そして、触れる時は、抵抗感や緊張を感じないよう、軽く柔らかく触るのが基本です。

ポイントは立体的な体に対して、施術者が体重をかけながら、手指が常に垂直になるように押すことと、“圧して離す”動作で身体に刺激を与え、圧の強弱を段階的に変え、いわゆる「痛気持ちいい」と感じる程度の圧をかけることで痛みやしびれ、冷え、倦怠感などの症状を緩和させます。

また、背骨のゆがみを正す脊柱矯正や関節を曲げ伸ばして、こわばりを防ぐ運動操作などもあります。

器具や薬物を用いず、副作用の心配もないため、老若男女に行えるのが利点です。指圧の手技を使い分けることで、的確な治療を行うことができます。

 

技法

 

指圧に最も適した指は母指(親指) であり、その手技を押圧操作といいます。

押し方や力の抜き方に変化をもたせることで、不調の改善を目指します。

 いろいろな種類の押し方があり、症状・目的に応じて使い分けます。押し方には、徐々に押す漸増圧、さらにゆっくり圧を加える緩増圧、また急に圧を加える急増圧などがあります。圧を抜く方法も複数あり、徐々に力を抜く漸減圧、さらにゆっくり離す緩減圧、急速に離す急減圧といった離し方を使い分けます。通常は、漸増漸減圧 (圧力を徐々にかけ、徐々に抜く)が基本となります。

指圧では、ちょうどよい深さまで指を押し込んだら、しばらく一定の圧を加え続けます。そして指先に神経を集中し、体の微妙な反応を感じとりながら、圧の強さや押す時間などを推し計ります。

母指のみを使う母指圧には、片手母指圧、両手母指圧、重ね母指圧が、ほかの指を一緒に使う方法には、二指法、三指法があります。また、手のひら全体で押す方法(手掌圧) もあり、片手掌圧、両手掌圧、両手重ね掌圧があります。

これらの多種多様な押圧操作の技法を駆使して、個々の状態に応じた圧をかける施術を行うことが重要です。

 

参考文献:

  • 関口善太著.〈イラスト図解〉東洋医学のしくみ.日本実業出版社,2003
  • 安井廣迪著.医学生のための漢方医学【基礎編】.東洋学術出版社,2008
  • 平馬直樹・浅川要・辰巳洋著.オールカラー版 基本としくみがよくわかる東洋医学の教科書.株式会社ナツメ社,2014
  • 仙頭正四郎著.最新 カラー図解 東洋医学 基本としくみ.株式会社西東社,2019
王 暁東

王 暁東(おう きょうとう)

現職:御幸病院 漢方研究室 主任研究員

経歴

【経歴】
5代続く中医学医師の家庭に生まれ、幼少の頃より家族から中医学の基礎を教わる。
1993年 河北医科大学中医学院中医学部大卒
総合病院中医科中医師(中医総合科)として勤務                       
1997年 熊本大学医学部第二生理学科に入局、脳・免疫科学の知覚生理学を専攻
2002年 熊本大学大学院医学研究科修士博士連合課程卒 
医学博士取得(西洋医学)
2016年 南京中医薬大学中医学院に入学、中医学臨床基礎・経方(漢方)医学を専攻
2019年 南京中医薬大学博士課程卒
医学博士取得(中医学) 
2004年~ 中国南京中医薬大学 客員教授
2014年~ アメリカ自然医学研究院 研究員
2020年~ 中国河北中医薬大学 客員教授
1999年~ 御幸病院および複数の医療機関に中医師・研究員・講師として勤務

【資格】

・医師(中国国家資格・中医師)
・医学博士(中国・中医学)
・医学博士(日本・西洋医学)
・自然医学療法医師(アメリカ自然医学学会)

【学会役職】

・世界中医薬学会聯合会 経方専業委員会 副会長
・世界中医薬学会聯合会 治未病専門委員会 常務理事
・日本中医協会 副会長

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