HOLISTIC HEALTH JOURNAL

ホリスティックヘルス ジャーナル

医療

漢方薬の服用期間及び“瞑眩”現象

はじめに読むコラム

 

こちらの記事は東洋医学の「基礎」となるコラムです、より理解していただくために、まず、はじめにご覧ください。

 

 1⃣ 現代人に必要な東洋医学の知識

 2⃣ 現代医学・伝統医学・西洋医学・東洋医学「言葉の定義」

 3⃣ 日本における漢方の普及と発展

 4⃣ 中国伝統医学、中医学及び現代中医学の定義と構造

 5⃣ 中医学の特徴

 6⃣ 中医学診療の考え方

 7⃣ 代替医療・統合医療とは何のこと?

 

 

 

漢方薬の服用期間 

 

「漢方薬は慢性症状に用いるもので、急性症状には効かない、長く飲まないと効かない」など、誤解されているケースが多くあります。 

確かに、損なわれた生体機能をダイレクトに補ってくれる西洋薬と違って、漢方薬は身体全体の機能を高めるように作用するため、効果を実感するまでには時間を要すことがあります。しかし、これは長く飲まなければ効かないということではなく、症状や体の変化として効果が自覚されるまでに時間がかかることによるものです。

一般的に病気になってからの期間が短いほど早く治り、慢性病ほど治すのにも時間がかかると言われていますが、風邪やぎっくり腰などの急性の病気や原因が単純で病気になってからの期間が短い場合など、漢方薬の効果をすぐに実感できる場合も数多くあります。

また、あらゆる急性症状に効く漢方薬も数多くあり、中国では急性期には3日~1週間で効果の出る漢方薬を服用し、その後は症状の変化に合わせて薬の処方を変えていくという治療が日常的に行われています。

ただし、中国においてもすべてを東洋医学で治療するわけではありません。「中西医結合」が盛んに叫ばれている中、両方の長所を生かす治療方針がとられています。

 

たとえば、癌などで病巣を取り除いた方がいいというような場合には、現代医学による手術を行い、その後のリハビリや再発の予防に東洋医学を用いることが多々あります。逆に、現代医学的では手遅れで手術できないというようなケースでは、東洋医学を中心に治療していくといったことも行われています。

 

 

 

 

“瞑眩”と副作用が違う

 

証に合わない漢方薬を服用すると、症状が悪化し、別の症状を引き起こす副作用が起きることがありますが、これとは別に“瞑眩”が起こることもあります。

漢方薬を服用し始めると症状が一時的に悪化し、胃の不快感など副作用のような症状が軽く現れますが、続けて服用すると不快感がなくなり、元の症状も改善されていくことを指します。

按摩の場合は揉み返しを指し、慢性的に疲労していた筋肉がほぐれ、老廃物が血液中に流れることが原因といわれます。また、だるさ、眠気、ほてりを感じる場合が多い鍼灸でも同じことが起きることがあります。

この現象は病邪への抵抗力が再び活発化し、病気と戦うために起きる好転反応といわれます。

 

副作用との違いは分かりにくいため、3日以上症状が続く場合は、医師に相談するといいでしょう。

 

 

参考文献:

  • 関口善太著.〈イラスト図解〉東洋医学のしくみ.日本実業出版社,2003
  • 平馬直樹・浅川要・辰巳洋著.オールカラー版 基本としくみがよくわかる東洋医学の教科書.株式会社ナツメ社,2014
  • 仙頭正四郎著.最新 カラー図解 東洋医学 基本としくみ.株式会社西東社,2019

 

 

 

王 暁東

王 暁東(おう きょうとう)

現職:御幸病院 漢方研究室 主任研究員

経歴

【経歴】
5代続く中医学医師の家庭に生まれ、幼少の頃より家族から中医学の基礎を教わる。
1993年 河北医科大学中医学院中医学部大卒
総合病院中医科中医師(中医総合科)として勤務                       
1997年 熊本大学医学部第二生理学科に入局、脳・免疫科学の知覚生理学を専攻
2002年 熊本大学大学院医学研究科修士博士連合課程卒 
医学博士取得(西洋医学)
2016年 南京中医薬大学中医学院に入学、中医学臨床基礎・経方(漢方)医学を専攻
2019年 南京中医薬大学博士課程卒
医学博士取得(中医学) 
2004年~ 中国南京中医薬大学 客員教授
2014年~ アメリカ自然医学研究院 研究員
2020年~ 中国河北中医薬大学 客員教授
1999年~ 御幸病院および複数の医療機関に中医師・研究員・講師として勤務

【資格】

・医師(中国国家資格・中医師)
・医学博士(中国・中医学)
・医学博士(日本・西洋医学)
・自然医学療法医師(アメリカ自然医学学会)

【学会役職】

・世界中医薬学会聯合会 経方専業委員会 副会長
・世界中医薬学会聯合会 治未病専門委員会 常務理事
・日本中医協会 副会長

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