はじめに読むコラム
こちらの記事は東洋医学の「基礎」となるコラムです、より理解していただくために、まず、はじめにご覧ください。
東洋医学の視点から見た西洋医学の課題
現代における西洋医学の発展はめざましいものがあります。
しかしながら、一方では今日の超高齢化や様々なストレスなどにより、慢性疾患、各種衰弱症、生活習慣病、心身症やストレス病など、いわゆる「現代病」が急増しています。
西洋医学は病気や個々の外見的症候の除去と生命の保全を目的に、主に病名や症状に対する治療法や処方が行われるため、これらの「現代病」に対して、十分に対応できない場合も多くなってきています。
便利さやスピード、科学的なことばかりを追い求めてきた足を休めると、いろいろな歪も見えてきます。
人体を解明しきれていません
最近は血圧やGOTの正常値などは一般常識となるなど、現代医学は我々の生活に密着したものとなっています。そのためか、体調が少々悪いような感じがしても、検査の結果、数値が基準内であればそれだけで安心してしまう人も多いのではないでしょうか。
しかしながら実際には、検査結果に異常が認められなくとも、患者さんが苦痛を訴えるケースが少なくありません。このような場合、西洋医学による診断や治療に頼るだけでは不十分な場合があります。
自然科学が自然現象をすべて解明できていないのと同じように、目覚ましく発展してきた西洋医学といえども人体に対して、まだまだ未解明な部分も多くあるということをしっかりと認識しておく必要があるのではないでしょうか。
薬品の副作用
薬品の副作用は、西洋医学がかかえる大きな歪みの一つといえます。その中には薬害問題に発展するような生命にかかわる副作用や湿疹や臓器の機能障害を引き起こす慢性的な副作用もあります。
一方、東洋医学で使用する漢方薬にも副作用の例はありますが、この場合は使用方法の誤解に基づくものが多く、そうでない場合でも重大な事態に陥るケ―スは化学合成薬による副作用に比べれば、はるかに少ないものです。
自然の原料が100%安全とはいえないものの、合成薬と比較すると人体にやさしいのは確かであるといえます。
「扶正」「食養生」「治未病」の不足
東洋医学の視点から見ると、西洋医学では慢性疾患に対して根本治療を行ったり、体質の強化を図るといった東洋医学でいう「扶正」を行うための技術開発が不足しているように感じます。
また、病後の回復期に医学的な「食養生」などの指示も不十分ではないでしょうか。
なお、症状が顕在化していない状態である「治未病」期における技術開発も不足しているように思われます。
*注釈:ここでいう「東洋医学」という言葉は「中国由来の伝統医学」のみを指し、「漢方医学」と近い意味を表します。また、「西洋医学」は現在、日本の病院で行われている現代医学のことを指します。
参考文献
- 関口善太著.〈イラスト図解〉東洋医学のしくみ.日本実業出版社,2003
- 安井廣迪著.医学生のための漢方医学【基礎編】.東洋学術出版社,2008
- 平馬直樹・浅川要・辰巳洋著.オールカラー版 基本としくみがよくわかる東洋医学の教科書.株式会社ナツメ社,2014