はじめに読むコラム
こちらの記事は東洋医学の「基礎」となるコラムです、より理解していただくために、まず、はじめにご覧ください。
西洋医学と東洋医学の対比表
西洋医学と東洋医学の対比表 |
||
区 分 |
西洋医学 |
東洋医学 |
概 念 |
ミクロの医学 |
マクロの医学 |
出 典 |
オランダ医学 |
黄帝内経・神農本草経・傷寒論/金匱要略 |
研究対象 |
人体を構成する器官、組織、細胞、分子の結構と機能 |
全人的な状態および状態の変化 |
研究方法 |
解剖学と動物実験および統計学に基づく分析方法(還元方法) |
数千年間に及ぶ数多くの経験をまとめた統合方法(系統方法) |
人 体 |
人体は器官という様々な精密部品が集まったものとして捉える。 |
人体(小宇宙)は自然界の大宇宙の一部、各内臓は生きている人体の機能単位として捉える。 大と小宇宙の間・機能単位の間・全人(体と心と精神)の間の統一性および個人差、現時点などの特異性を重視。 |
病 気 |
病変部が発現しているか、検査データで異常値が示された場合などに病気と捉える。 |
西洋医学的な「病気」がなくとも、体調の崩れ、精神的な不安感、心理的な鬱や暴走など、全人的なすべての違和感も含まれる。 |
病 因 |
外部からの病原菌などの侵入 |
体内の“気”の状態(機能の盛衰)とバランスの乱れ、心理的精神的な原因も重視 |
診 断 |
臨床検査、分析的、実証的 |
五感重視(望・聞・問・切の四診)、総合的、経験的 |
虚実の判定 |
代謝性疾患と虚弱疾患 |
正気・邪気(病態)の相互関係あるいは体力充実度で判定 |
治 療 |
病気の症状を取り除くことを目的にその原因となっている臓器や部位を治療する。 場合によっては切除する。 |
全人的統一的に診て、適宜な順番(個人差があり)で治療して行く。 ① 体内外の“邪気”を取り除く ② 体内のバランスを整える ③ 自己治癒力を高める |
治療特徴 |
対症療法 |
弁証論治 |
医療 |
病名医療 |
病証医療 |
使用薬剤 |
生薬中の有効成分や類似物質を化学合成。単一成分が主体。 |
何種類かの生薬を特有の理論に従って組み合わせた複合剤が主体。 |
薬の特徴 |
薬効が強く、速効性(ウイルスへの攻撃と排除など)がある反面、副作用が出ることもある。 |
効き方が緩やか、遅効性と速効性(補法と瀉法)が調和、根本治療を求め、対症治療もある。 副作用は西洋薬よりも少ない。 |
長 所 |
病気の原因が判明すると確立された治療法に基づき直ちに治療できる。 |
オーダーメード、全人対応、対象範囲が広い。 生薬加減あるいはエキス剤を用い副作用が少ない。 |
短 所 |
長期に薬剤を服用すると副作用が出ることもある。 |
煎じ薬は時間を要し、飲みにくい。自由診療。 エキス剤は効能が弱く、限定的。 |
役割・得意分野・優先させるべき病態 |
原因が明確、治療が効果的な疾患や症状。 緊急性が高い病態 手術の必要な疾患 |
原因がわからない病態 虚弱体質に伴う病態 女性特有の種々の健康障害 慢性疾患、生活習慣病 西洋医学の補完 西洋医学的に原因が認められるが、積極的治療が困難である病態。 |
予 防 |
二次予防 (検査) 重視 |
一次予防 (生活・環境改善) 重視 |
*注釈:ここでの「東洋医学」と「西洋医学」は、前回“東洋医学の視点から見た西洋医学の課題”に注釈した意味と同じです。
参考文献:
- 関口善太著.〈イラスト図解〉東洋医学のしくみ.日本実業出版社,2003
- 安井廣迪著.医学生のための漢方医学【基礎編】.東洋学術出版社,2008
- 平馬直樹・浅川要・辰巳洋著.オールカラー版 基本としくみがよくわかる東洋医学の教科書.株式会社ナツメ社,2014