はじめに読むコラム
こちらの記事は東洋医学の「基礎」となるコラムです、より理解していただくために、まず、はじめにご覧ください。
東洋医学における治療方針の決定
東洋医学により治療を行う場合は、東洋医学独自の分析方法(弁証論治)に基づいて、最初に対処療法を行うべきか、根本療法を行うべきか、あるいは両方を並行して行うべきかを判断することになります。
治療方針の決定は次の4つの治療原則に基づきます。
第1「治病求本」とは
病因の本質を見極めることですが、まずはこれから始めることになります。
病気の本質的な事柄を「本」、そうでないものを「表」と言います。本を治療することを本治、表を治療することを標治、さらに両方を同時に治療することを標本同治といいますが、原則として、まずは本を治療します。
本が治れば標も自然に解決することが多いのですが、逆に“急なれば標を治す”という原則もあり、邪気が詰まり病状が悪化した場合は標治を優先します。
標治は対症療法なので、通常は標治により症状が落ち着いたのちに本治の根本治療へ移行します。これが“緩なれば本を治す”という原則です。
第2「扶正袪邪」とは
正気と病邪の闘いにおいて、正気を補強(補)したり、病邪を除去(瀉)したりすることです。
第3「陰陽調節」とは
人体の陰陽バランスが崩れている場合、強い方を除き、弱い方を補う治療することです。
第4「随機(三因)制宜」とは
治療方針の背景にある考え方で、①季節の影響、②住む地方の気候や習慣、③人の年齢や性別を勘案することです。
ここでは、東洋医学を受診するタイミングに注意すべきです。
発病直後に現代医学の治療により、良い効果が得られている場合はよいのですが、あまりよい効果が得られていない場合は、早めに東洋医学の対処療法を用いてみるのも選択肢の一つではないでしょうか。
対処療法を必要とする病気の中にも、東洋医学が有効であるものも少なくありません。
病気がこじれないうちに出来るだけ早く治療を開始した方が、どの医療でもよりよい効果を得やすいというのは自明の理です。しかし、現状では東洋医学の特徴が十分に知られていないためか、従来の治療を続けてしまい、いよいよ困ったときに東洋医学に活路を求めて来るケースが多くなっています。
このような場合、根本治療が得意な東洋医学といえども、病気がこじれてしまった後では、当然ながら治療効果は上がり難いものです。
対処療法か根本療法かを見分ける例として、西洋医学では、ホルモンの分泌異常や腫瘍の形成、神経の失調など、その多くを人体内部に求めます。
そして、もしホルモンに異常があれば、ホルモン剤の使用や分泌腺の切除などによってそれを調節する治療がなされますが、なぜホルモンに異常が起こったかについて、根本的な分析がなされないことも多いようです。
これに対して東洋医学では天候や季節の変化、食事や労働、感情の変化など、生活に密着して起こるこれら全てを探り、原因を考えます。たとえ現代医学により、ホルモンの異常と診断されていても、その根本原因として、生活面に隠された何らかの原因を追求して治療を行おうとします。そのため、生活指導や食事習慣とも連動させて、治療することになります。
*注釈:ここで「東洋医学」という言葉は、「中国由来の伝統医学」のみを指し、「漢方医学」と近い意味を表します。「西洋医学」は現在、病院で行われている現代医学のことを指します。
参考文献
- 関口善太著.〈イラスト図解〉東洋医学のしくみ.日本実業出版社,2003
- 安井廣迪著.医学生のための漢方医学【基礎編】.東洋学術出版社,2008
- 仙頭正四郎著.最新 カラー図解 東洋医学 基本としくみ.株式会社西東社,2019