はじめに読むコラム
こちらの記事は東洋医学の「基礎」となるコラムです、より理解していただくために、まず、はじめにご覧ください。
「夏にゴーヤ、冬至にカボチャを食べる」など、昔から季節に応じて、食材を調理し、食することで五臓六腑を調節する習慣があります。四季の変化を捉え、補養すべき五臓を養うのが薬膳の基本となります。
人体の陰陽や五臓は五季により変化する
中医学では天人合一思想に基づき、自然界の陰陽の変化に従って身体の陰陽も変化していくと考えられています。そのため、季節ごとに適した食材も変化します。
1年は通常、春・夏・秋・冬の四季に分けられますが、中医学では五行理論に基づき長夏*を加えた五季に分けています。五季は立春~立夏が春、立夏~大暑が夏、大暑~白露が長夏、白露~立冬が秋、立冬~立春が冬となり、さらに二十四節気(旧暦における四季の気候変化の分類)に分けられます。
陰陽のバランスや五臓の働きも五季に合わせて変化します。陰陽のバランスは晩春から長夏は陽が強く、秋から早春までは陰が強くなります。
また、五臓の働きは春は肝、夏は心、長夏は脾、秋は肺、冬は腎が活発となります。
季節により、不足した陰陽を補い、活発になる五臓を保養することがポイントです。
食養生法は五季に合わせることが肝要
五臓は五季と関連しており、春は肝の機能が、夏は心、長夏は脾、秋は肺、冬は腎が活性化します。五季の変化は、五臓に直接的な影響を与え、間接的に各器官の作用に変化をもたらします。
春は陽気が強まり、精神が高揚気味になります。また春先は風が強く、外邪が身体に入りやすいため、肝を補養し、気の流れを促進、興奮を静め、外邪を防ぐための食材選びが重要となります。
夏は1年で最も暑く、雨も多いことから、万物の生長が見られます。その変化に呼応し、身体の陽気も旺盛になります。拍動や発汗量が増え、心の機能も活発化するため、寒涼性で酸味・苦味の食材で心を養うようにします。
長夏は長雨により、内湿が溜まることから、脾を損ないやすいので、湿を排出させ、脾の気を巡らせる必要があります。このためには温性、甘味の食材で益気健脾を促すことが肝要です。
初秋は残暑と乾燥の影響により、津液不足となるため、涼性で甘味・苦味の食材で滋潤させます。晩秋には温性で辛味・酸味で温肺滋陰作用の食材を用い、肺を補養するとよいでしょう。
冬は腎の機能が盛んになります。涼・平性および甘·酸·鹹(かん)味(塩辛い味)の食材は腎陰を補い、腎を補養する作用を持ちます。
用語解説
「長夏」…旧暦の6月。約小暑、大暑、立秋、処暑の4つの節気を指します。雨が多く暑いため、植物が成長著しい時期でもあります。ただし、これは黄河流域を指します。
参考文献:
- 関口善太著.〈イラスト図解〉東洋医学のしくみ.日本実業出版社,2003
- 辰巳洋著.実用中医薬膳学.東洋学術出版社,2008
- 平馬直樹・浅川要・辰巳洋著.オールカラー版 基本としくみがよくわかる東洋医学の教科書.株式会社ナツメ社,2014
- 仙頭正四郎著.最新 カラー図解 東洋医学 基本としくみ.株式会社西東社,2019