はじめに読むコラム
こちらの記事は東洋医学の「基礎」となるコラムです、より理解していただくために、まず、はじめにご覧ください。
由来
按摩(あんま)は、中国の伝統的な治療法の1つです。
「按」は押さえることを、「摩」は撫でることを指しており、「抑按調摩」(よくあんちょうま)(圧することで抑制し、撫でることで調える)が語源とされ、略して按摩となりました。
その歴史は古く、奈良時代にはすでに日本の医療の一分野として位置づけられていたとされています。
当初は、導引按蹻(どういんあんきょう)(体を押さえたり筋肉や関節を動かすなどして、気を体にとり入れる治療術)の形で伝わったといわれています。
特徴
多様の手技を取り入れた施術
中医学の経絡理論に基ついて、多彩な手技を取り混ぜで、不調がある箇所を押さえたりなでたりすることで、痛みを軽減したり、こりをほぐして、気・血・津液を体中に巡らせて自然治癒力を高め、身体全体のバランスを整える効果があります。
今日では按摩の基本手技は主に7つに分けられています。
- 患部に圧をかけていく血流やリンバの流れを促す圧迫法(押す)
- 手指でつまんだり揉みほぐしたりする筋肉の疲労物質の排出を促す揉捏法(じゅうねつほう)(もむ)
- 手を密着させてなでさする軽擦法(けいさつほう)
- 手指で叩く血行を促進させ神経を興奮、又は鎮静させる叩打法(こうだほう)
- 手指を震わせてその振動を与える静脈の還流を促す振せん法
- 関節を弛緩させた状態で動かす運動法
- 手を転がしたり軽く叩いたりする曲手(きょくで)
があり、それぞれ効果が異なります。
経絡に沿って中心から外側に向かって経穴を刺激
按摩は血行を促進させるのが主な目的で、その方法は基本的に経絡理論に沿って行われます。経絡に沿って中心から外側に向かって押したりなでたりすることで刺激を与え、気・血の流れを改善したり、症状に合った経穴を押して体調を整えます。
その際、体の中心部、つまり心臓に近いところから末端へ、縦、横、あるいは円を描くように揉んでいきます。
例えば、上腕に施術する時は肩から手先の方へ向かって、遠心的に刺激を与えていきます
衣服の上から刺激を与える
衣服を脱いで行うマッサージとは異なり、按摩の場合は薄い衣服の上から強弱の刺激を与え施術を行います。皮膚を露出している場合は手ぬぐいをかけて行われます。薄い衣服や手ぬぐいを通して与える刺激で筋肉のこりをほぐし、筋組織内の循環を改善して、不調を治していくのが按摩です。
日本按摩の特徴
腹部按摩
日本独自の方法として、腹部に按摩を施す按腹(あんぷく)も生み出されています。五臓六腑の要である三焦を中心に、腹部のこりを按摩によってほぐしていくもので、内臓の不調はもちろん、全身の不調にも効果があるとされています。
指技(指圧)
七つの手技(手当て)を基本とした按摩は広く民間で行われ、その間に日本独自の方法に発展していきました。現在では、さまざまな手技の中でも特に手指を使った揉みを中心とした施術が行われています。
参考文献:
- 関口善太著.〈イラスト図解〉東洋医学のしくみ.日本実業出版社,2003
- 安井廣迪著.医学生のための漢方医学【基礎編】.東洋学術出版社,2008
- 平馬直樹・浅川要・辰巳洋著.オールカラー版 基本としくみがよくわかる東洋医学の教科書.株式会社ナツメ社,2014
- 仙頭正四郎著.最新 カラー図解 東洋医学 基本としくみ.株式会社西東社,2019