HOLISTIC HEALTH JOURNAL

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医療

東洋医学療法の紹介コラム⑯灸治療とは

はじめに読むコラム

 

こちらの記事は東洋医学の「基礎」となるコラムです、より理解していただくために、まず、はじめにご覧ください。

 

 1⃣ 現代人に必要な東洋医学の知識

 2⃣ 現代医学・伝統医学・西洋医学・東洋医学「言葉の定義」

 3⃣ 日本における漢方の普及と発展

 4⃣ 中国伝統医学、中医学及び現代中医学の定義と構造

 5⃣ 中医学の特徴

 6⃣ 中医学診療の考え方

 7⃣ 代替医療・統合医療とは何のこと?

 

 

 

灸治療とは、もぐさなどを燃焼させて身体の一定部位に温熱的刺激を与えることで経絡や経穴に作用し、関連する器官や気血の流れを調整する治療法です。

 

灸治療のメガニウム

 

とは、もぐさを指先でひねり小さな粒状にしたものを経穴の上に置いて、線香で火をつける治療法のことです。治療の場合は経穴を鍼で刺激することで不調の改善を目指しますが、灸治療ではもぐさを燃やすことで生まれる熱が経穴から身体に伝わることで血行が良くなり、それに伴って気の流れが改善し、さまざまな不調が解消されます。

灸治療も鍼治療同樣、身体に刺激を与えることで恒常性維持機能 (ホメオスタシス)の反応を導き出し、病気の治療や予防を行います。鍼治療との違いは、鍼治療が鍼による機械的刺激に対し、灸はもぐさによる温熱的刺激を与えるという点です。温熱的刺激により、局所を温め循環を改善する効果も得ることができます。

身体を温めるという点では、灸は入浴とも似ています。灸治療で体が温められると、疲労回復やリラクゼーションなどの効果があり、その結果、ストレスが緩和され、自律神経のバランスも整ってきます。この温熱効果に加え、ヨモギの有効成分を体内にとり込むことで、灸はより一層の効果が期待できると考えられています。

具体的な症状としては、関節痛や筋肉痛、神経痛のほか、冷えと関係の深い更年期障害や不妊症などの婦人科疾患の治療にもよく用いられています。

 

 

 

もぐさ

 

もぐさとは、乾燥させたヨモギの葉の裏側にある綿毛を集めて作られたものです。ヨモギの葉は、艾葉(がいよう)という生薬としても知られています。昔から、自然治癒力や免疫力を高める働きがあるといわれており、食す、漢方薬として服用する、お風呂に入れるなど、病気予防や健康増進のために使われてきました。

ヨモギの葉は殺菌・消炎・保湿効果にすぐれ、古くから止血剤としても用いられてきました。葉の裏にある毛茸(もうじ)と腺毛がもぐさの主成分で、燃やしたときに独特の香りを発しますが、これは腺毛に含まれる精油(チネオール)によるものです。

もぐさには良質のものから一般的なものまであり、良質のもぐさは精製、不純物を除去して作られ、おもに散艾(ちりもぐさ)(加工していない精製したもぐさ)として使われます。一般的なもぐさは切艾(きりもぐさ)(精製した後、和紙で円柱状に巻いたもぐさ)などに使われます。

臨床で使われる散艾は指でひねって米粒大程度の艾炷(がいしゅ)を作り、患部に立てて線香で火を付け、燃焼させます。何壮(そう)据えるかは年齢や性別などによって異なります。

 

 

 

 

 

直接灸と間接灸

 

灸には肌に直接もぐさをのせる直接灸と、もぐさの下にショウガなどを置き、熱の伝わり方がマイルドな間接灸があります。

直接灸の場合、もぐさを直接皮膚の上に置き、線香などで火をつけ、燃え尽きるまで焼き切ります。もぐさは目的によって大きさが異なり、半米粒大から直径高さとも1cmほどのものまであります。直接灸のうち、米粒半分の大きさから米粒大くらいのもぐさを直接皮膚に置き、燃やし切る灸を透熱灸といいます。

 間接灸のうち、ニンニクやショウガ片などをもぐさの下に置いて熱を穏やかに伝える方法を隔物灸といいます。そのほか、簡単に皮膚に貼れる台座付きタイプ(台座灸)の市販品もあります。

間接灸の中には、直接皮膚に触れず、肌に近づけて温める方法もあります。もぐさを棒状に固めた棒灸がそれにあたり、先端を燃焼させて皮膚から数cm離れたところから経穴を温めます。鍼の上に丸めたもぐさをのせて火をつける灸頭鍼や、もぐさを箱などの專用の器具に入れて温める方法(箱灸)もあります。

 

有痕灸と無痕灸

 

灸治療には有痕灸(直接灸)と無痕灸(間接灸)の2種類があります。症状や体質で有痕灸と無痕灸を使い分けます。

有痕灸は生体に強い温熱刺激を与え、それに伴い生じる生体反応を治療に利用します。その際、体表に微小な火傷を残すため、有痕灸には着火しても60℃前後しか温度が上がらない、純度の高いもぐさが使われます。

 一方、肌の上でもぐさを直接燃焼させず、もぐさと肌の間に台座や物を置いたり、燃焼部分を肌に近づけたりと、その輻射熱で温熱刺激を与える無痕灸であれば、一般向けに市販されている灸を用いて家庭でも施灸ができます。

最近では、火を使わず発熱剤で熱を発生させるお灸もあります。冷え性や足の疲れ、便秘、食べ過ぎ、飲み過ぎなとの症状に効果を発揮します。

 

参考文献:

  • 関口善太著.〈イラスト図解〉東洋医学のしくみ.日本実業出版社,2003
  • 安井廣迪著.医学生のための漢方医学【基礎編】.東洋学術出版社,2008
  • 平馬直樹・浅川要・辰巳洋著.オールカラー版 基本としくみがよくわかる東洋医学の教科書.株式会社ナツメ社,2014
  • 仙頭正四郎著.最新 カラー図解 東洋医学 基本としくみ.株式会社西東社,2019

 

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