HOLISTIC HEALTH JOURNAL

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医療

東洋医学療法の紹介コラム⑮ 鍼治療とは

はじめに読むコラム

 

こちらの記事は東洋医学の「基礎」となるコラムです、より理解していただくために、まず、はじめにご覧ください。

 

 1⃣ 現代人に必要な東洋医学の知識

 2⃣ 現代医学・伝統医学・西洋医学・東洋医学「言葉の定義」

 3⃣ 日本における漢方の普及と発展

 4⃣ 中国伝統医学、中医学及び現代中医学の定義と構造

 5⃣ 中医学の特徴

 6⃣ 中医学診療の考え方

 7⃣ 代替医療・統合医療とは何のこと?

 

 

 

 

人間の身体は、表面の特定の部位に刺激を与えると、病気の治療や予防に効果的な反応を示します。鍼灸治療はそうした反応を利用して行う治療法です。

 

鍼治療のメガニズム

 

東洋医学の治療には、生薬を使った漢方治療のほか、気功といった薬を使わない治療もあります。

鍼治療とは、病変のある部位や臓腑と関わりの深い経穴に鍼を刺す治療法のことです。経穴を刺激することによって経絡を通るの流れを改善し、体内の陰陽のバランスを整えて、本来の健康な状態に戻すものです。

鍼治療は、非常に細い金属の鍼を使って治療を行うことで、鍼術ともいいます。人間の身体は刺激を与えると、その部位を守ろうとしたり、逆に興奮状態にあるものを鎮静化したりする性質があります。これを恒常性維持機能またはホメオスタシスといいます。

鍼治療は、そうした身体の反応を利用し、身体の表面に機械的な刺激を与え、病気の治療や予防を行います。とくに経穴(ツボ)から経絡を刺激し、その経絡に関係する臓腑や気・血・津液の変調を調整して、正常な状態に戻す治療法は東洋医学独特のものです。

 また、鍼治療には自律神経のバランスを整える効果も期待できます。実際、鍼を打つと血流がスムーズになり、体がポカポカと温かく感じられることがあります。これは、自律神経の副交感神経が優位になり、心身ともにリラックスしている状態になったためです。リラックスすることで心身が癒され、疲労回復にも役立ちます。鍼治療を継続的に行えば体全体の調子もよくなり、免疫力もアップするといわれています。

 

鍼治療の対象

 

鍼治療の対象となる代表的な症状には、肩こりや腰痛、神経痛、関節炎などが挙げられます。また、近年増加しているパソコンによる作業が原因の頸椎や肩・腕のトラプルにも効果があります。また、頭痛をはじめ、さまざまな痛みの緩和や鎮静化にも有効です。

このほか、消化器系疾患やアトピー性皮膚炎、気管支喘息、不眠症、更年期の手足の冷えやしびれ、のぼせ、さらにがんなどの化学療法の副作用緩和にも、鍼治療がよく用いられています。

WHO(世界保健機関) は鍼灸治療の有効性が認められた病気として神経系疾患(神経痛、脳卒中後遺症、自律神経失調症、ノイローゼなど)、運動器系疾患(関節炎、リウマチ、頸肩腕症候群、五十肩、腱鞘炎など)、循環器系疾患消化器系疾患代謝内分泌系疾患など多くの疾患を挙げています。2015年には、鍼灸治療を含む東洋医学が国際的な疾病分類に加えられました。

 

世界で広く認められた治療法

 

鍼治療の歴史は古く、もともとは経験療法から始まったものですが、そこに陰陽論、五行論、気の思想などが加味され、体系化されました。

古代中国において、鍼は鎮痛目的、または外科的治療のために用いられていたとされます。その後、鍼によって身体に物理的な刺激を与えて、気の流れを整え、痛みや病気などを改善するための療法として発展してきました。

鍼治療の適応範囲は非常に広く、鍼の治療効果は、灸も含めた鍼灸治療全般にいえることですが、日本、中国、韓国などのアジアだけでなく、20世紀後半に、欧米など世界各国に鍼治療が伝わり、多くの医療現場で用いられるようになりました。

現代では自然科学的なデータも集積され、より有効に治療を行うため、欧米などでも臨床試験が行われています。

NIH(米国国立衛生研究所)が病気に対する鍼灸療法の効果とその科学的根拠及び西洋医学の代替治療法としての有効性を発表しています。

1997年には、NIHから鍼灸の適応疾患についての合意声明書が出されるなど、国際的にもさまざまな疾患に有効な治療法として認められています。

 

 

日本の現状

 

日本には6~7世紀頃に伝えられ、江戸期に杉山和一(のちの杉山検校) によって管鍼法が確立され、これが日本の鍼の基礎となりました。

 明治以降、西洋医学が伝来し、鍼治療は一時的に衰退しましたが、今日では、大学に鍼灸学部などが設置され、専門家の育成や研究が積極的に行われています。

現在、日本では一定の症状に対して健康保険で鍼治療や灸治療、指圧マッサージの治療が受けられます。ただし、保険適用の手続きに関してはいくつかの注意事項がありますので、事前に確認しておくとよいでしょう。

 

参考文献

  • 関口善太著.〈イラスト図解〉東洋医学のしくみ.日本実業出版社,2003
  • 安井廣迪著.医学生のための漢方医学【基礎編】.東洋学術出版社,2008
  • 平馬直樹・浅川要・辰巳洋著.オールカラー版 基本としくみがよくわかる東洋医学の教科書.株式会社ナツメ社,2014
  • 仙頭正四郎著.最新 カラー図解 東洋医学 基本としくみ.株式会社西東社,2019

 

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