はじめに読むコラム
こちらの記事は東洋医学の「基礎」となるコラムです、より理解していただくために、まず、はじめにご覧ください。
東洋医学と西洋医学 どちらがいいのか?
体調不良のときに東洋医学と西洋医学、どちらを選ぶべきか悩ましいのではないでしょうか?
自分の好みで一方的にどちらかに決めるのは得策ではありません。
同じ病気であっても、それぞれの患者さんの状況に応じて、西洋医学の医療、東洋医学の医療、あるいは両方の併用と臨機応変に使い分けることが重要です。
可能であれば、両方の医学を熟知している人が相談窓口になり、患者にアドバイスしてくれるような医療機関や行政機関があればよいのですが、残念ながら現状ではそのようなところはありません。
人によっては知識があり、信頼のおける医療人(医師や針灸師、薬剤師など)が身近にいて、適切なアドバイスを受けることが可能な場合もあると思いますが、多くの皆さんは個人個人で判断しなければなりません。
そこで、そのような方がどちらを選べばよいのか、その目安となるよう、一般に言われている両方の医学の相違について、いくつかの視点から述べたいと思います。
ミクロの医学とマクロの医学?
西洋医学はまず細分化した医学という学問があり、主に病気や個々の外見的症候の除去と生命の保全を命題として、西洋的自然科学の論理を背景として発展してきました。
しかし、自然科学に基づくが故に臓器の局所的な病変の分析や生体の化学的な分析に終始し、個々の異常に対して局所的に対応することが多いのが現状です。
そのため、たとえば循環器系の専門医、あるいは呼吸器系の専門医というように、医師も専門分野に絞って学習しなければ治療できないなど、パーツパーツの知識が求められるようになってしまいました。
そのことで自分の専門分野は治療できるものの、専門外の分野は治療できない状況になっています。
その結果、複数の症状を抱えた患者さんが複数の診療科を受診せざるを得ず、薬も重複処方されるようなことがしばしば起こるのです。
これに対して、東洋医学ではまず、患者さんの身体=人体を一つの有機体と捉えて、全人的に診ることで、そこからどう治療すべきか、その手段を考え、全体的・総合的に病気を捉え、「治す事・癒す事」を最大の目的として治療を施しています。
そのため、東洋医学の知識を学ぶ場合は、常に全身を対象にしたものになっており、一人の治療者が自分の専門とする分野の病巣に限らず、病巣から離れた別の部位の各部を全身的に診断し、各部の疾患にもアプローチし治療することも可能になっています。
このようなことから、西洋医学と東洋医学を対比し、西洋医学はミクロの医学、東洋医学はマクロの医学であるとも言われています。
この相違を活用する例として、例えば出血があり受診する場合、解剖学的に見て明らかに切れているなら、西洋医学のミクロの技術で血管やリンパ管を縫い合わせる対応が適切でしょう。
どこも切れていないのにじわじわ出血する原因不明の場合は東洋医学のマクロ的な治療を選ぶことが良いでしょう。
*注釈:ここで「東洋医学」という言葉は、「中国由来の伝統医学」のみを指し、「漢方医学」と近い意味を表します。「西洋医学」は、現在、病院で行われている現代医学のことを指します。
参考文献
- 関口善太著.〈イラスト図解〉東洋医学のしくみ.日本実業出版社,2003
- 平馬直樹・浅川要・辰巳洋著.オールカラー版 基本としくみがよくわかる東洋医学の教科書.株式会社ナツメ社,2014
- 仙頭正四郎著.最新 カラー図解 東洋医学 基本としくみ.株式会社西東社,2019