はじめに読むコラム
こちらの記事は東洋医学の「基礎」となるコラムです、より理解していただくために、まず、はじめにご覧ください。
漢方薬の構成
漢方薬は一般的には2~10数種類の生薬で構成されています。
構成している複数の生薬にはそれぞれに味や性質があり、作用や副作用及び関係する臓腑も異なります。各生薬を配合して、一つの漢方薬とすることで、相互に協調して作用を補強する一方、毒性や副作用を抑制したり、効果の偏りを調整し、それぞれの薬効を最大限に引き出すようにプログラムされています。
各生薬が持つ複数の有効成分が絡み合うことで、相乗的に、あるいは抑制的に働く仕組みがその特徴です。
漢方薬で副作用が起こりにくいのは、生薬の絶妙な配合システムによるものと言えます。
漢方薬の効能分類は上品(じょうほん)、中品(ちゅうほん)、下品(げほん)または上薬(じょうやく)、中薬(ちゅうやく)、下薬(げやく)の3段階に分かれており、これを“三品分類”といいます。それぞれのランクは、生薬の性質によって分類されています。
上品は作用が穏やかで長時間の服用でも副作用が起こらない生薬が含まれます。体力を増強し、全身の調子を整えます。
中品は上品の生薬を助け、身体の抵抗力を養う働きを持ちます。穏やかな作用で副作用も少なく、病気の進行を止め、保養するために用います。
下品は、病気を治す作用が強い生薬が属していますが、副作用を伴うことがありますので、服用の量や期間に留意する必要があります。
上・中・下の順に効果・作用が高まりますが、一方で毒性も生じるため、処方全体に工夫をこらす必要があります。
漢方薬(方剤)の組み立てルールは、基本的に“君臣佐使”(くんしんさし)の4つのグループの組み合わせで成り立っています。
主体となるのが方剤の主な働きを決定する君薬(くんやく)で、そのほか、その働きを補助する臣薬(しんやく)、君薬と臣薬とは違った面から働きかけ、君薬や臣薬の作用が過剰にならないように抑える佐薬(さやく)、方剤全体の調和をとったり、薬全体を病気に関係のある特定の臓腑や経絡に効率よく作用させる使薬(しやく)があります。
配合は2つ以上の生薬を配合することですが、配合の目的は相乗効果を生み、副作用を抑えることにあります。生薬を組み合わせる際には、“配伍七情”(はいごしちじょう)という配合ルールに注意する必要があります。
その種類は下記のとおりです。
① 単行(たんこう):生薬一品だけで構成される。
② 相須(そうすい):漢方薬の効果を高めるために薬効が類似する2種類以上の生薬を配合する。
③ 相使(そうし):一方を主に、他方を補とし、主薬の効果を増加させる。
④ 相畏(そうい):ある生薬の毒性反応、副作用が他の生薬により、消去、軽減、緩和される。
⑤ 相殺(そうさい):ある生薬が他の生薬の副作用を消去、軽減させる。
⑥ 相悪(そうお):2種類以上の生薬を合わせることで、作用が低減し、無効になる。
⑦ 相反(そうはん):2種類以上の生薬を合わせることで副作用が生じる。
②相須と③相使は薬効を高めるための配合で、④相畏と⑤相殺は毒性や副作用を抑える配合です。なお、⑥相悪と⑦相反は禁忌です。
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参考文献:
- 関口善太著.〈イラスト図解〉東洋医学のしくみ.日本実業出版社,2003
- 安井廣迪著.医学生のための漢方医学【基礎編】.東洋学術出版社,2008
- 平馬直樹・浅川要・辰巳洋著.オールカラー版 基本としくみがよくわかる東洋医学の教科書.株式会社ナツメ社,2014
- 仙頭正四郎著.最新 カラー図解 東洋医学 基本としくみ.株式会社西東社,2019