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HOLISTIC HEALTH JOURNAL

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東洋医学療法の紹介コラム㉑ 中医正骨療法(手技療法4)

はじめに読むコラム

 

こちらの記事は東洋医学の「基礎」となるコラムです、より理解していただくために、まず、はじめにご覧ください。

 

 1⃣ 現代人に必要な東洋医学の知識

 2⃣ 現代医学・伝統医学・西洋医学・東洋医学「言葉の定義」

 3⃣ 日本における漢方の普及と発展

 4⃣ 中国伝統医学、中医学及び現代中医学の定義と構造

 5⃣ 中医学の特徴

 6⃣ 中医学診療の考え方

 7⃣ 代替医療・統合医療とは何のこと?

 

 

 

概念と歴史

 

中医正骨は外傷(骨折、脱臼、捻挫、挫傷、打撲)に対して行われる治療法を指します。日本伝統の医術となる柔道整復術の源とされ、外れた関節や骨折を治す、いわゆる「骨つぎ」のことですが、中医正骨での実際の治療は外傷一般と幅広く多岐にわたります。

骨や筋を元の状態に戻す整復法、ギブスなどを使う固定法、患部の機能回復を早める治療法が昔から接骨院整骨院で行われています。

現代では骨傷科もしくは傷科と称されていますが、その内容は整復法、固定法、正骨推拿法、器具を用いた物理療法、加えて、漢方薬の外用内服法、運動療法が含まれています。

歴史的には、接骨、正骨(整骨)などの用語は、隋唐以前の書物にも見られますが、医学の専門科としての正骨科は、隋唐の時代に生まれ、宋や金、元を経て成熟したものとなってきました。

日本の伝統医学である柔道整復術は、その源のひとつを中医正骨としています。江戸時代に出版された柔道整復術の古典などには、日本人自身の工夫も見られますが、その大半は中国の正骨書からの抜粋で構成されています。もちろん、現代の柔道整復術は、西洋医学と融合し日本の気候風土に基つき、更に独自に発展したもので、中医正骨と同じものではありません。

現代中国では、中医正骨(骨傷科・傷科)は中医師を養成する医科大学で教えられています。しかし最近では、正骨を学んだ中医師も診療報酬や医療訴訟などの諸事情から、現代医学の手術を用いることが多くなっています。長い歴史を持ち、精妙な技術を伝える正骨は今や中国本土でも姿を消しつつあります。

 

正骨手法

 

中医正骨では、骨折、脱位(脱臼) 傷筋や筋出槽(筋損傷)、骨錯縫(こつさくほう)(関節機能不全)などの運動器疾患をおもに治療します。

実技では、正骨手法10法として手摸(しゅばく)心会(しんかい)、拔(ばっ)伸(しん)牽引(けんいん)、旋転回撓(ぎょう)、屈伸收展(しゅうてん)、成角折頂、端擠提按(たんおていあん)、夾擠(そうお)分骨、揺擺触碰(ようとうしょくほう)、対扣捏合(たいひかでつごう)、按摩推拿(あんますいな)があり、それぞれに特徴があります。  

 

 

手摸(しゅばく)心会(しんかい) 視診・触診などの診察法です。全身と局所の視診触診を行い、骨格や筋結、さらに経絡を通じて、外傷の状態を把握します。
拔伸牽引(ばっしんけんいん)

骨折や脱臼した骨の牽引法です。骨折や脱臼の整復の基本となるのが牽引法です。複数の人数で行う対牽引も含まれます。

屈伸收展(しゅうてん) 短縮転位などに対する屈曲整復法です。整復法のなかでも屈曲整復法をおもに指します。関節の可動性の回復にも用いられます。
按摩推拿(あんますいな) 外傷の処置・治療を行う手技です。外傷を対象とした疼痛緩和、早期治癒、機能回復を目的とした手技療法です。
端(たん)擠(お)提按(ていあん) 側方転位に対する牽引直圧整復法です。
施転回撓(ぎょう)

捻転転位などに対する整復法です。

爽擠(そうお)分骨

2つの骨が並列する部位での直圧整復法です。

揺攏触碰(ようとうしょくほう) 斜骨折などで骨折端同士を密接に接触させる整復法です。
対扣捏合(たいひかでつごう) 離開した骨折端や粉碎骨折での骨片を合わせる整復法です。
成角折頂(せっちょう) 屈曲整復を用いた直圧整復法です。

 

このほかに固定法として、夾(きょう)板という固定材料を用いたものがありますが、さまざまな形状があり、施術者によって独特な創意工夫がなされています。

また器具を用いた物理療法には、温熱を用いるものなどもあります。

漢方薬の外用内服法は現在の柔道整復術では伝えられなくなったもののひとつです。災害時の医療資源確保などの問題が脚光を浴びる昨今、身近な薬草を用いた外傷に対する薬方など、貴重な智恵が失われるのは非常に残念なことです。   

 

 

正骨薬方

 

中国漢方を源流に、日本の気候風土に合わせて発展した外傷用漢方薬が、かつては日本の正骨薬方にありました。

一例として「気血の巡り」、「筋の張り」、「肩関節の痛み」などに効くという白骨散(びゃっこつさん)は、犬山椒(いぬさんしょう)、大蓼(おおたで)、十八小角豆(じゅうはちささげ)、黄柏(おうばく)、白萩(しらはぎ)などの身近な植物を用いた外用薬で、正骨手技後に貼って用いたとされます。

これらの外用薬は、現代にはほとんど伝わっていません。

 

参考文献:

  • 関口善太著.〈イラスト図解〉東洋医学のしくみ.日本実業出版社,2003
  • 安井廣迪著.医学生のための漢方医学【基礎編】.東洋学術出版社,2008
  • 平馬直樹・浅川要・辰巳洋著.オールカラー版 基本としくみがよくわかる東洋医学の教科書.株式会社ナツメ社,2014
  • 仙頭正四郎著.最新 カラー図解 東洋医学 基本としくみ.株式会社西東社,2019
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