HOLISTIC HEALTH JOURNAL

ホリスティックヘルス ジャーナル

植田 真史先生のマインドフルネスのススメ

マインドフルネスの「定義」②

 
 
今回の記事シリーズでは「マインドフルネスの定義」②についてご説明しています。
前回、「マインドフルネスの定義」①として有名な文章を紹介し、その中でも注意の向け方について述べている部分を4つに分けて考えることができる、というところまで話していました。

 

①今という瞬間のなかで、注意を向ける
 
②意図的に、注意を向ける
 
③評価も判断もすることなく、注意を向ける
 
④手順に沿って、注意を向ける
 
 
今回ではこの注意の向け方の4つの態度について、上から順番に解説していきますね。
 

 

①今という瞬間のなかで、注意を向ける

 
 
「今という瞬間のなかで、注意を向ける」とはどういうことなのでしょうか?
具体的に解説する前に、マインドフルネスストレス低減法(MBSR)を受講した方の言葉を引用します。
 
 
 
 
私の人生は、今という瞬間の積み重ねでした。
これからも一つひとつの瞬間を生きていくでしょう。
年月の積み重ねではありません。
私に与えられているのは今という瞬間だけ。
それ以外にはありません。
 
ナディーン・ステア、八十五歳、ケンタッキー州ルイスヴィル在住
J. カバットジン 著 春木 豊 訳(2007) マインドフルネスストレス低減法 北大路書房
 
 

 

いかがでしょうか?
あまりピンとこないかもしれませんが、少し言葉を足すと、「私たちが何かに注意を向けることができるのは、今この瞬間をおいて他にない」ということです。
今から振り返って「過去」と呼ばれる瞬間は、もう存在していません。同様に「未来」と呼ばれる瞬間は、まだ存在していません。過去や未来に思いを馳せることはできますが、その思いにさえも、「今」という瞬間の中でしか注意を向けられないのですね。
過去や未来に対する思いも、「今」というステージの上に現れてくるものと捉え、そのステージの上で観察します。忙しい日常生活の中で、私たちは様々な悩みを抱えて生きています。
 
過去への後悔(どうしてあんなことしたんだろう…)
未来への不安(これからどうすればいいんだろう…)
 
このように過去や未来に没入している状態は、マインドフルではないということになります。
仮に後悔があったとしても、「どうしてあんなことしたんだろう…」という思いが「今ある」と捉えて、あくまで「今」というステージの上で注意を向ける、というのがマインドフルな態度であるということができます。
 

 

②意図的に、注意を向ける

 
次は「意図的に、注意を向ける」というところを解説していきます。まず、詩を引用させてください。
 
 
 
日の昇るにも
手を合わさず
月の沈むにも
心ひかれず
あくせくとして
一世を終えし人の
いかに多きことぞ
 
道のべに花咲けど見ず
梢に鳥鳴けど聞かず
せかせかとして
過ぎゆく人の
いかに多きことぞ
 
(後略)
 
坂村真民 「時」 より引用
 

 

私たちは毎日いろんなものに注意を向けて生活しています。
でもその注意の対象は自分で「意図的に」選んだものでしょうか?
 
考えてみれば、いつの間にか注意を奪われていることが多いのではないでしょうか?
 
食事をしながらテレビを見ていて、LINEの通知が鳴ったら反射的にスマホを手に取る、LINEを見ていてメールがきたらそちらを開く、その間にテレビが面白そうなことを言っていたらまたテレビに目が向く、という具合に…
 
仕事でも書類を作っていたら電話がかかってきて、電話が終わったら別の仕事を頼まれて、という風にどんどん注意が違うところに移っていきます。
 
 
上に引用した詩ではそのような状態を「あくせく」「せかせか」と表現しているのかもしれませんね。
それはマインドフルな状態ではありませんよ、ということです。
マインドフルな状態というのは、自分自身で「これに注意を向けよう」と決めた対象に注意を向けたときに初めて立ち現れてくるということなんですね。
次から次に押し寄せる仕事や情報の波に流されず、自分が選んだ対象にとどまる、ということでもあります。
 
 

まとめ

 
今回の記事では、マインドフルネスの定義における注意の向け方について、最初の2つ①②をご紹介しました。
次回は残りの注意の向け方について説明していきますね。
植田 真史

植田 真史(うえだ まさし)

みゆきの里顧問
医師・マインドフルネス講師

米国Brown大学認定マインドフルネスストレス低減法(MBSR)講師
Home of Mindfulness代表
現代マインドフルネスセンター副代表

眼科医だった頃にうつ病に悩まされたが、マインドフルネスとの出会いをきっかけに快復。
その際の経験から精神科医に転向し、渡米してマインドフルネスの講師資格を取得。
病院外にも目を向けてマインドフルネスの普及活動に取り組んでいる。

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