HOLISTIC HEALTH JOURNAL

ホリスティックヘルス ジャーナル

医師監修

はじめてのマインドフルネス④温かさ

 
 
 
マインドフルネスとはそもそもどんなものなのか、解説していくこのシリーズ。前回の記事(はじめてのマインドフルネス③観察力)では、「マインドフルネスの3つの力」のうち、「観察力」について解説しました。
 
今回の記事では、3つ目の力である「温かさ」について説明していきます。
 
 
 

温かさとは

 
 
今までの記事でご説明したように、マインドフルネスの実践ではさまざまな対象を観察していきます。
観察力を培うことで、トラブルへの効果的な対処ができたり、無用なトラブルにわずらわされずに済む、ということでした。
しかし、日常のトラブルならまだしも、もっと大きな困難に対しては、観察力だけでは不十分なことがあります。
 
そんなときに大切になるのが、今回取り上げる「温かさ」です。
「温かさ」とは、観察の対象(ここでは困難なこと)に対して、
 
「そこにいてもいいよ」と存在を認める気持ち
「どんな感じなんだろう」と知ろうとする好奇心
 
と表現できます。
これまで培ってきた観察力が、上記のような温かさを帯びると大きな困難も観察の対象とすることができるようになり、「困難があっても心穏やかに生きる」ことが可能になるのです。
 
ここまでの話は少し抽象的でわかりにくいと思いますので、次の段落で具体例を挙げてご説明します。
 
 
 

「温かさ」のある観察力で大きな困難に向き合った例

 
 
交通事故にあったAさんの話
 
Aさんは50代の男性。交通事故に遭い、後遺症の腰痛が残ってしまいました。
痛みが続くため整形外科に行きましたが、画像検査で異常はないと言われ、
整骨院に行っても痛みは改善しませんでした。
 
Aさんの心の中は、苦しみに満ちていました。
 
「なんで俺がこんな目に遭わないといけないんだ…」
「この痛みさえなければ…」
 
そんな思いが毎日のように浮かんできます。
 
そんなある日、Aさんは本屋さんでマインドフルネスの本をたまたま手に取り、それがきっかけで瞑想会に通うようになりました。瞑想を通じて、「マインドフルネスの3つの力」を体得したAさん。痛みに対して「温かさ」のある「観察力」を向けられるようになってきました。すると、次第に痛みとの関わり方に変化が起こってきました。
 
今まで、痛みという存在を心から排除しようとしていたAさんですが、痛みが存在することを優しく認め、好奇心をもって観察することができるようになったのです。
そうすると、今まで得体の知れない敵のように思えていた痛みが、より客観的に感じられるようになりました。
今も痛みは残っていますが、Aさんがそれに苦しむことはなくなったのです。
 
 
 
 

温かさのある観察力が苦しみを変化させる

 
 
Aさんの例はマインドフルネスから得られる恩恵を端的に表しています。
Aさんは痛みが残っているにもかかわらず、それによる苦しみからは解放されました。
これこそがマインドフルネスが目的としている、「困難があっても、心穏やかに生きる」ということなのです。
 
この状態に達するためには、困難(Aさんの場合は痛み)を、客観的に観察できるようになる必要があります。
そのために大切になるのが、他でもない「温かさ」なのです。
 
Aさんの場合は、痛みに対して
 
「別にお前のことは好きじゃないけど、そこにいてくれるのは構わないよ」と存在を認め、
「痛い、痛いと思っていたけど、よく観察してみるとどんな感じなんだろう?」と好奇心を持ったことにより、
 
客観的な観察が可能になったのです。
 
 
 

まとめ

 
 
いかがだったでしょうか?今回は困難の例として痛みを取り上げましたが、人生におけるあらゆる困難に対して、上記のアプローチは共通しています。
温かさを持って観察することで苦しみが変化していくのです。
 
 
次回の記事では、今まで説明してきた内容を整理し、マインドフルネスの全体像を振り返ります。
植田 真史

植田 真史(うえだ まさし)

みゆきの里顧問
医師・マインドフルネス講師

米国Brown大学認定マインドフルネスストレス低減法(MBSR)講師
Home of Mindfulness代表
現代マインドフルネスセンター副代表

眼科医だった頃にうつ病に悩まされたが、マインドフルネスとの出会いをきっかけに快復。
その際の経験から精神科医に転向し、渡米してマインドフルネスの講師資格を取得。
病院外にも目を向けてマインドフルネスの普及活動に取り組んでいる。

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