はじめに読むコラム
こちらの記事は東洋医学の「基礎」となるコラムです、より理解していただくために、まず、はじめにご覧ください。
自然素材を使い、毒性を抑える処方がなされている漢方薬は副作用が非常に少ないものの、全く副作用がないわけではありません。服用方法を誤れば、健康を害する恐れもあります。
漢方薬の特徴
漢方薬の大きな特徴は副作用の少なさです。
漢方薬の原料となる生薬は8割が植物類で、ほか動物、鉱物などを用いています。このような自然由来の生薬を使っている漢方薬は2000年以上にわたる長い歴史の中で効果が確認され、その安全性は非常に高いといえます。
また、君臣佐使という生薬の組み合わせの法則に従い、副作用が出ないように処方がコントロールされています。
しかし、「漢方薬には副作用がまったくない」という過信は禁物です。漢方薬も西洋医学の薬と同様、使用方法を誤ると健康を害する恐れは十分にあります。
まず認識すべきことは漢方薬に用いられる生薬にも毒性を持つものがあるということです。
副作用を起こす恐れがある生薬とその主な症例は次のとおりです。
甘草:血清ナトリウム上昇、むくみ、高血圧、偽アルドステロン症、ミオパチー 柴胡:膀胱炎、間質性肺炎 地黄:食欲不振、みぞおちの不快感、吐き気、嘔吐、下痢など 大黄:食欲不振、みぞおちの不快感、腹痛、下痢など 附子:動悸、のぼせ、舌の痺れ、吐き気など 麻黄:頻脈、動悸、不眠、精神興奮、消化器症状、泌尿器症状など |
以上のように一部の生薬は、一定の効果を発揮すると同時に副作用が出ることもあります。このような生薬は体の状態によっては使えないこともあります。
しかし、通常、漢方薬は一つの生薬の作用だけが過剰にならないように、それを抑える別の生薬も配合されていますので、特定の生薬が持つ副作用が出ることは稀です。漢方エキス剤は長年にわたる研究の中で毒性を減らす加工法や生薬の組み合わせが開発されてきましたので、現在では副作用に関する問題は極めて少なくなっています。
また、食べ合わせの食品があることと同様に、生薬にも配合すると害になる組み合わせがあります。例えば、附子と半夏や貝母、甘草と海藻(ホンダワラ)や甘遂など。しかし、これらは中国では中薬学の初期の段階で「配合禁忌」(十八反・十九畏)として学ぶため、配合により副作用が生ずることは稀です。
副作用が起きる主な原因
まず、現代医学的使用が挙げられます。
漢方薬は東洋医学の診断結果である“証”をもとに処方されるのが本来ですので、病理観の違う現代医学の診断に当てはめようとした場合、自分の“証”に合わない漢方薬を服用してしまう可能性があります。このような場合に副作用が生じることが多いのです。
これらは副作用というよりもむしろ誤用にあたります。
一方、「急性症状の治療と根本治療における薬の切り替え」という原則を知らないために起こる副作用もあります。
対症療法で劇的に効果があったことで医療関係者が「この患者にはこの処方が合う」と結論付けてしまい、症状の変化を考慮せず同じ薬を出し続けるというケースもあります。
この場合、患者さん自身の現時点での症状や順番に従って治療すべき重点や方向性、すなわち現在の“証”に合わない漢方薬を服用し続けることになり、不具合が生じることもあるのです。
なお、漢方薬の過剰な摂取や間違った方法による不適切な服用、西洋薬や健康食品などとの併用などにより、極めて安全な漢方薬といえどもアレルギー反応などの副作用が出ることがあります。中には深刻な副作用が出る場合もありますので、注意が必要です。
漢方薬による副作用を防ぐには、素人判断をせず、医師や薬剤師に相談することが何より重要です。
参考文献:
- 関口善太著.〈イラスト図解〉東洋医学のしくみ.日本実業出版社,2003
- 平馬直樹・浅川要・辰巳洋著.オールカラー版 基本としくみがよくわかる東洋医学の教科書.株式会社ナツメ社,2014
- 仙頭正四郎著.最新 カラー図解 東洋医学 基本としくみ.株式会社西東社,2019