はじめに読むコラム
こちらの記事は東洋医学の「基礎」となるコラムです、より理解していただくために、まず、はじめにご覧ください。
漢方薬は大別すると医療用と一般用の2種類があります。
医療用漢方製剤
医療用漢方製剤は西洋医学の一般的な病院、病院の漢方外来、漢方専門医院などの医療機関で処方してもらうことができます。現在ではエキス剤、煎じ薬を含む、148処方が健康保険の対象となっています。したがって、これらの漢方薬を処方してもらう場合は原則として1~3割の患者負担となりますので、西洋薬より安価な場合もあります。費用の負担が少なく、長期的な治療に適していますが、漢方薬の選択の幅には自ずと制限があります。
保険診療の特徴はセミオーダー方式で厚生労働省に承認された既定の148処方の中から、患者の症状に適したものを選ぶことになります。
最近では、西洋医学の病院でも漢方薬を処方できますが、西洋医師が処方する場合、漢方薬を西洋薬と同様に取り扱い、証を勘案することなく処方していることもあります。注意点として、症状が複数ある場合には各症状に合わせて処方されるため、生薬が重複することもあります。
一方、一般病院内にある漢方外来は、西洋、東洋医学のどちらにも精通した医師がいますので、血液検査や心電図といった検査に加え、四診など東洋医学的な診断を受けられます。基本的に保険適用漢方薬を処方しますが、保険適用外の漢方薬を処方することもあります。
漢方診療を専門に行う漢方専門医療機関では、症状によっては自由診療(保険外診療)を行う場合もあります。
漢方治療の多くは健康保険が適用されますが、病名ごとに使用できる漢方薬が制限されているため、個々人の体質、病状に合わせた処方を行おうとすると保険適用外となる場合も多くあります。
「初診から治療終了までの診療行為中、保険適用の診療行為と保険不適用の診療行為を混在させてはならない」という混合診療禁止ルールがあります。
このため、自由診療が一部でもある場合は、すべてを自由診療にする必要が生じます。
自由診療は未認可の生薬や保険適用疾患以外の漢方薬の利用も可能なため、患者の証に合わせた本来の治療を行うことができます。
自由診療の処方は数百種類以上に上ります。その処方の特徴はフルオーダー方式で患者の症状・体質に合わせて生薬の配合を調整し、量の加減も行います。
留意点としては保険適用外のため全額自己負担となることです。また、品質が一定ではなく、処方する医師や薬剤師の漢方医学に関する経験と知識が求められます。
漢方専門医療機関や漢方薬局で自由診療を受ける場合は健康保険が適用されないため、全額患者負担となります。
一般用漢方製剤
一方、一般用漢方製剤はエキス剤と煎じ薬など多種類があり、漢方薬局やドラッグストアでも入手できます。医師の処方箋がなくても気軽に購入できますが、医療用より効き目が弱く作られています。
また、一般用漢方製剤は保険の適用がありませんので、薬価は医療用より高いものの自由診療の薬よりは安価です。漢方薬には高いというイメージがあると思いますが、場合によっては同じ病気でも西洋薬より安価で、日数が短く済むこともあります。
参考文献
- 関口善太著.〈イラスト図解〉東洋医学のしくみ.日本実業出版社,2003
- 安井廣迪著.医学生のための漢方医学【基礎編】.東洋学術出版社,2008
- 平馬直樹・浅川要・辰巳洋著.オールカラー版 基本としくみがよくわかる東洋医学の教科書.株式会社ナツメ社,2014
- 仙頭正四郎著.最新 カラー図解 東洋医学 基本としくみ.株式会社西東社,2019