はじめに読むコラム
こちらの記事は東洋医学の「基礎」となるコラムです、より理解していただくために、まず、はじめにご覧ください。
生薬は薬理作用がある自然物
生薬は数千年に亘る中国の歴史の中で、数多くの人々が長年の歳月をかけて、実際に使用し、その効能を確認するという経験の積み重ねにより、見つけ出されてきたものです。
中国最古の薬物学の書『神農本草経』には、365種類の生薬が収録されており、植物・動物・鉱物の3種類に分類され、その内訳は植物薬が252種、動物薬が67種、鉱物薬が46種となっています。
このように生薬は東洋医学の長い歴史の中で臨床を重ね、効果の認められたもののみが漢方薬として用いられています。
生薬が持つ効能にはそれぞれ特性があります。その大きな効能として、身体を温める度合いに関わる薬性、働きかける臓腑を示す帰経、生薬の持つ味を分類した薬味の3つがあります。
生薬のもつ性質(四気)と味覚(五味)の作用
生薬の作用は様々な観点から分類されますが、その代表的な分類法に四気(薬性)と五味(薬味)があります。
四気
「体を温めるか冷やすか」によって生薬を分類する方法で、寒、涼、温、熱及びどちらにも偏らない平を加え、5つに大別されます(五性)。
寒冷症状を治す働きが強いものを熱性、やや働きが穏やかな生薬を温性、熱性症状を治す働きが強いものを寒性、穏やかなものを涼性とします。
五味
生薬の味が作用と関連していることに基づいた分類法です。
長年の経験から、それぞれの味は、類似の効能を持つ傾向があり、五味は味の分類を示すだけでなく、その効能についても指しています。
酸、苦、甘、辛、鹹(カン)の5つの味に分類し、酸は酸っぱい味、苦は苦い味、甘は甘い味、辛はピリ辛い味、鹹は塩辛い味となります。
実際には、淡味と渋味の7つの味があります。
生薬の作用範囲(帰経)と方向性(昇降浮沈)
生薬にはその効果が発揮される臓腑や経絡が決まっており、この適応範囲を帰経といいます。臓腑のどこに作用するかは帰経によって異なります。
五味と帰経の関係は深く、五つの味覚による分類で作用する五臓がわかります。酸味の帰経は肝経となっており、適量の酸味は肝を補養します。苦味は心経に入りやすく心の働きを助けます。甘味は脾経に、辛味は肺経に、鹹味(塩辛味)は腎経に入りやすいです。
なお、生薬の効能は、その重さも重要な手がかりとされ、軽い生薬が体内に入ると上昇の性質を持ち、中から外側へ拡散します。一方、重い生薬は、下降の性質をもち、外側から中へ沈む(昇降浮沈)という考え方です。
これら五味、五性、帰経などの基本的な性質は、生薬の性質を把握するうえで有用ですが治療においては原則的なものと言えます。
参考文献:
- 関口善太著.〈イラスト図解〉東洋医学のしくみ.日本実業出版社,2003
- 安井廣迪著.医学生のための漢方医学【基礎編】.東洋学術出版社,2008
- 平馬直樹・浅川要・辰巳洋著.オールカラー版 基本としくみがよくわかる東洋医学の教科書.株式会社ナツメ社,2014
- 仙頭正四郎著.最新 カラー図解 東洋医学 基本としくみ.株式会社西東社,2019