はじめに読むコラム
こちらの記事は東洋医学の「基礎」となるコラムです、より理解していただくために、まず、はじめにご覧ください。
概念
手技療法とは、道具(鍼灸)や薬(漢方薬)などを使わず、手指で揉む・叩くといった刺激を体に与え、素手のみで施術を行い、その反応により、健康を保ち不調を治す療法のことです。
患部を手で擦(さす)る“手当て”が、その原型とされ、按摩や指圧やマッサージおよび中医正骨(柔道整復術)もその流れを汲む代表的な手技療法として挙げられます。
按摩と正骨は中国で、指圧と柔道整復術は日本で、マッサージはヨーロッパでというように、世界各地でさまざまな手技療法が生まれました。その後、国や地域の特性を背景に、独自の理論が完成し、身体の変調を整えることを主な目的として、世界各地に広く普及しています。
歴史
按摩は、古典「黄帝内経」でも記述が見られる中国古来の養生法です。明の時代からは推拿(すいな)*と呼ばれ、鍼灸とならぶ医療として体系化されていました。
中医正骨は柔道整復術の源とされ、いわゆる「骨接ぎ(ほねつぎ)」のことで、歴史的には接骨、正骨(整骨)といった用語も使われ、医学の専門科としての正骨科は隋唐の時代に生まれ、宋金元の時代を経て成熟したものです。
日本には5世紀頃、朝鮮半島を経由して按摩と中医正骨が伝来しました。江戸時代の鎖国を経て、日本独自の形で発達し、民間療法として一般に広がっていきました。
1947年には法律が制定され、按摩、指圧、マッサージ、および柔道整復、理学療法を業務として行う場合、国家資格が必要となりました。カイロプラクティックや整体などは、すでに一般的な手技療法ではありますが、国家資格がなく、日本においては無認可手技療法であるため、按摩、指圧、マッサージ、柔道整復、理学療法を標榜しての施術はできません。
資格
按摩・指圧・マッサージと柔道整復を職業とするためには、国家資格の「あん摩マッサージ指圧師」「柔道整復師」の免許取得が必要です。
この資格を得るためには、高校卒業後(もしくは、同等以上の条件を含む)、専門学校などの養成施設に入学し、手技療法の理論や実技、臨床実習のほか、東洋医学や基礎医学などを3年間の教育課程で学びます(視覚障害者の場合は、盲学校高等部專攻科および保健理療科で学びます)。
この国家試験に合格すると、病院や治療院、スポーツ施設などで、按摩マッサージ指圧師や柔道整復師として働くことができます。
未来
手技療法には、体の不調を改善するだけでなく、心身のリラクゼーション効果も認められています。
そのほか、慢性的な病気や不定愁訴 (原因のわからないつらい症状)などにも有効です。
ストレスの多い現代社会において、按摩マッサージ指圧師や柔道整復師の活躍がますます期待されています。
用語解説
「推拿(すいな)」:明代以降、医療としての按摩は推拿と呼ばれました。
「推」は手を一方向へ押し進めること、「拿」は手でつかみあげるという意味です。中国では推拿でも疾病の予防・治療を行っており、推拿師、保健推拿師,推拿医師という資格があります。
参考文献:
- 関口善太著.〈イラスト図解〉東洋医学のしくみ.日本実業出版社,2003
- 安井廣迪著.医学生のための漢方医学【基礎編】.東洋学術出版社,2008
- 平馬直樹・浅川要・辰巳洋著.オールカラー版 基本としくみがよくわかる東洋医学の教科書.株式会社ナツメ社,2014
- 仙頭正四郎著.最新 カラー図解 東洋医学 基本としくみ.株式会社西東社,2019