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東洋医学療法の紹介コラム㊺ 気功療法㉒ 気功法の五の四

太極拳の特徴

 

 太極拳は次のような特徴を持っています。

 

①柔軟性・・・身体も心も柔らかく

第一の特徴は、動きが軽く柔らかいです。固く力を入れ込むところがなく、伸び伸びと動けます。

太極拳では、身体の無駄な力を入れることなく、ゆったりと体を動かします。このため、身体を緊張させることなく筋肉や関節を十分に動かすことができるため、“気”や“血”の流れが良くなります。これは健康を考えるうえで欠くことのできない条件です。

柔軟な動きをするためには、柔軟な身体、とりわけ足腰の柔軟性が必要です。最初のうちは身体の硬い人でも、毎日、稽古を続けるうちに自ずと柔らかくなりますので、心配せず始めてください。

さて、身体の柔軟性より難しい問題として、心の柔軟性があります。現代病の多くはストレスに由来するといわれていますように、私たちが健康を保つには、上手にストレスを解消していかなくてはなりません。そのためには、小さなことにこだわらない心をもつことです。細かく見ていけば、気になる点、気に入らない点があるでしょう。でも少し見方をかえてみれば、案外、心が軽くなっていくものです。

太極拳を続ける皆さんが、こうした心の柔軟性もあわせて持っていただければ、体も心もますます健康で豊かになっていくでしょう。

 

②連続性・・・流れるように

 

 

始めの姿勢から終わりの姿勢まで、全部の型を切れ目なく連続して行います。途中で型がいろいろ変化しますが、各自のペースにあわせて水が流れるように動きます。止まると意識も切れますので注意を要します。

 太極拳では、連続して途切れることなく、多数の動作を次々と行います。あたかも中国の大河が昼夜を問わず、とうとうと流れるがごとく、続けていくのです。

 動き始める前に多少緊張したり、身体が硬くなっていたとしても、次々と動作を続けていくうちに、次第に身体のこわばりが取れ、心の緊張もほぐれてくるものです。

そして、ついには深い心の統一にまで至るのですが、それは切れ目なく、ひたすら動作を続けていくうちに自然に体得できるものだといえるでしょう。

 

③統一性・・・悩みごとを忘れて

 

 意識と動きを一致させます。意識と動きを呼吸で繋ぎ、注意力を集中させ、ほかのことは何も考えないで完全一体となります。

太極拳を行っているときには、ほかのことは何も考えないで、太極拳だけに心を統一します。心配ごとや悩みごとをすべて忘れて、太極拳に打ち込んで動いているうちに、いつの間にか、ヨーガでいえばめい想、座禅でいえば三味に似た境地に入っていけるのです。

めい想や禅のような精神集中は、大脳や中枢神経の働きをスムーズにさせます。

また、アメリカーの長寿に関する研究を行っているグル―プは、150歳まで生きる条件として、毎日、少なくとも15分ずつ、神経をリラックスさせた最高の心理的条件をもつことを挙げています。

精神を統一させることは、心身の健康のために欠かせない条件ですが、たとえば座禅のような方法は、一般の人にはたいへんむずかしいものです。太極拳では体を動かしながら体に意識を統一することによって、比較的にやすく精神集中することができるのです。

 

④円運動性・・・まろやかに、美しく

 

人間の自然の動作-曲げる、捻る、伸ばす円運動を基本にバランスよく組み合わせてあるため、動きに無理がありません。このことは、身体の各系統が円運動を繰り返すことによって鍛練され、身体の各部分を均等に発達させるからです。さらに、筋肉や骨格の弾力性を増強させる効果もあるため、太極拳が「円運動」と言われる由縁です。

太極拳では、「ボールを抱える形」「両手で円を描く」などの表現でもわかるように、まろやかな動きが中心になっています。前進するときの足の運びも、円を描くようにします。

円運動は、内臓組織にほどよいマッサージ効果を与え、体全体に好影響を与えます。また精神面でも、安定感をもたらします。

円は直線と違って切れめがありません。それはまた、太陽や地球などの形とも同じで、宇宙のイメージにもつながります。円運動は自然の法則にのっとった、永遠の美しい動きであるともいえるでしよう。

 

以上、4つの特徴を持つ太極拳を実際に練習する場合は、

  • ゆっくり
  • 軽く
  • 静かに動作する

ことが大切です。

 

参考文献:

  • 林茂美・林誠著.らくらく気功健康法―だれにでも手軽にできて効果抜群.永岡書店,1990
  • 関口善太著.〈イラスト図解〉東洋医学のしくみ.日本実業出版社,2003
  • 安井廣迪著.医学生のための漢方医学【基礎編】.東洋学術出版社,2008
  • 平馬直樹・浅川要・辰巳洋著.オールカラー版 基本としくみがよくわかる東洋医学の教科書.株式会社ナツメ社,2014
  • 仙頭正四郎著.最新 カラー図解 東洋医学 基本としくみ.株式会社西東社,2019

 

王 暁東

王 暁東(おう きょうとう)

現職:御幸病院 漢方研究室 主任研究員

経歴

【経歴】
5代続く中医学医師の家庭に生まれ、幼少の頃より家族から中医学の基礎を教わる。
1993年 河北医科大学中医学院中医学部大卒
総合病院中医科中医師(中医総合科)として勤務                       
1997年 熊本大学医学部第二生理学科に入局、脳・免疫科学の知覚生理学を専攻
2002年 熊本大学大学院医学研究科修士博士連合課程卒 
医学博士取得(西洋医学)
2016年 南京中医薬大学中医学院に入学、中医学臨床基礎・経方(漢方)医学を専攻
2019年 南京中医薬大学博士課程卒
医学博士取得(中医学) 
2004年~ 中国南京中医薬大学 客員教授
2014年~ アメリカ自然医学研究院 研究員
2020年~ 中国河北中医薬大学 客員教授
1999年~ 御幸病院および複数の医療機関に中医師・研究員・講師として勤務

【資格】

・医師(中国国家資格・中医師)
・医学博士(中国・中医学)
・医学博士(日本・西洋医学)
・自然医学療法医師(アメリカ自然医学学会)

【学会役職】

・世界中医薬学会聯合会 経方専業委員会 副会長
・世界中医薬学会聯合会 治未病専門委員会 常務理事
・日本中医協会 副会長

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