③心身の修業になる
現代では日常生活をはじめ、あらゆるところで機械に頼るようになったことから、便利になった反面、身体を動かすことが少なくなりました。車やエレベーターがあるため、歩くという簡単なことさえ、よくできなくなっています。
「健全な精神は健全な身体に宿る」といわれますが、身体は使わなければ自ずと弱くなっていきます。身体が弱ると、心も弱ります。事実、心身症、ノイローゼ、うつ病、登校拒否症、アルコール中毒、麻薬中毒などが近年、増加しています。また、自殺や離婚が増えているのも、現代の特徴です。これは、機械文明の発達により心身の健全な活動ができなくなっているためではないでしょうか。
気功法の訓練をすれば、持久力、忍耐力のような能力を開発し、満足感や愛情などの情緒を養うこともできますので、このような現代のゆがみと闘うためにも役立つのです。
④潜在能力を開発する
人体は実に精妙にできていますので、本来、すべての人が“仙人”並みのすばらしい機能を有しているのです。しかし、その多くは発揮されることなく、隠されたままで終わってしまいます。脳の細胞は生前に20%程度しか使用されていないといわれており、人が100年生きたとしても、残りの80%を使用することなく死んでいくといわれています。気功法は、このような人間の潜在能力を開発するのに役立つのです。
一方、自然科学が発達した結果、人体の仕組みの秘密が少しずつ解明されてきました。この人体の解明で最後に残されたのが、人間の一番貴い能力である心(精神の働き)の問題です。中国では、「心は気に似て、天・地・人をかけめぐる、動きのある物質である」などといわれていますが、まだまだ解明されていない部分が多いのです。
中国の有名な科学者で、原子力、人工衛星、ミサイルなどの研究の権威である銭学森博士は、1981年に「人体科学」という言葉を使って次のような考え方を提唱しています。
「人体科学は、人体の機能を研究し、人体の潜在能力を開発して、それを最大限に発揮させる科学だ。これには主に中医学(中国医学)理論、気功学、人体特異機能(超能力)の三つの研究部門がある。気功学はこの中で最も核心的で重要な部門である」
もし現代の科学によって、気の正体が解明されれば、生命の謎、心・精神の働きの真理に一歩近づくことに違いありません。また、気功法の科学的な研究が進んでいけば、誰もが比較的容易に“超能力”を獲得する時代が到来することでしょう。
参考文献:
- 林茂美・林誠著.らくらく気功健康法―だれにでも手軽にできて効果抜群.永岡書店,1990
- 関口善太著.〈イラスト図解〉東洋医学のしくみ.日本実業出版社,2003
- 安井廣迪著.医学生のための漢方医学【基礎編】.東洋学術出版社,2008
- 平馬直樹・浅川要・辰巳洋著.オールカラー版 基本としくみがよくわかる東洋医学の教科書.株式会社ナツメ社,2014
- 仙頭正四郎著.最新 カラー図解 東洋医学 基本としくみ.株式会社西東社,2019