「心」を調整し入静状態になる自己コントロ-ル法
調心(ちょうしん)とは、心(意識)を整えることです。気功では脳の興奮や緊張を鎮め、心の中に杂念がなく、無念無想の境地になることを目指します。こうした入静(にゅうせい)状態になるためのメインとなる技術が調心なのです。ほかの体操などと違う気功の最大の特徴は、この調心にあるともいえます。
入静の状態になると、雑念が一切消失するとともに、ストレスや悩み、不安などから心が開放されるといわれています。それに伴って、自律神経の乱れや滞った気・血の流れが改善され、心身ともに健康をとり戻すことができるのです。
ただし、初心者がいきなり入静に至るのは難しいものです。そのために、調身→調息→調心という流れで行うほか、調心の鍛錬を続けていくことで徐々にリラックスできるようにしていきます。すると最終的には、自然と入静できるようになってきます。
1つのことに集中することで次第に無念無想に
調心の技術としては、通常の状態から入静状態へと橋渡しをする目的の一念代万念(いちねんだいまんねん)という方法があります。普通、いきなり目をつぶって意識を集中しようとしても、心の中にはさまざまな雑念が浮かんできます。一念代万念は、1つのことに集中することで、雑念をとり払う方法です。ネガティプな思考や感情で揺れ動く心を落ち着かせ、心静かな世界へ導くことで、心身をリラックスさせる効果があります。その結果、無念無想の境地である「万念皆無」(まんねんかいむ)といわれる生命力に満ち溢れた世界へ誘われるとされています。
一念代万念の方法の1つが存想法(そんそうほう)です。あるイメ-ジを頭に浮かべながら、それに合わせて体を自然に動かし、リラックスしていく方法です。そのほか、意識を呼吸そのものに集中することで、雑念を取り払う随息法(すいそくほう)、下腹部の中心にある丹田、もしくは外の景色などを見て意識を集中することで入静状態に入る意守法(いしゅほう)、呼吸を数えることに意識を集中する数息法(すうそくほう)などがあります。
初心者の場合は、好きな香りや静かな音楽で環境作りをすることも、1つの方法です。最初は数分から始め、慣れてきたら少しずつ時間を長くしていくのがよいです。
入静して体と心が一体となって初めて、真の気功を体感し、その素晴らしさを実感できるのです。
参考文献:
- 林茂美・林誠著.らくらく気功健康法―だれにでも手軽にできて効果抜群.永岡書店,1990
- 関口善太著.〈イラスト図解〉東洋医学のしくみ.日本実業出版社,2003
- 安井廣迪著.医学生のための漢方医学【基礎編】.東洋学術出版社,2008
- 平馬直樹・浅川要・辰巳洋著.オールカラー版 基本としくみがよくわかる東洋医学の教科書.株式会社ナツメ社,2014
- 仙頭正四郎著.最新 カラー図解 東洋医学 基本としくみ.株式会社西東社,2019