中医学は、統一体観・哲学観・恒動観・系統観を根拠とし、人体の正常な構造と働きを独特の身体観(解剖生理学)で把握し、これらが異常を来たした状態を病因と病機(病因病理学)から解明します。
まず、望診・聞診・問診・切診(四診)で体内のバランスと各臓器の機能の強さと働きが順調かどうかを判別し、中医学特有の“弁証論治”の分析方法により、各種の自他覚症状の体内外の根本的な原因(証)を探し出し、“証”によって確立されている治療原則を基に治療方法を選び、処方する薬を組み立てます。
古代から連綿として蓄積された薬物学(本草)と処方学の知識を駆使して適切な処方を選択し、診断学によって導かれた治療法に基づいて、適切な薬の投与等を行います。
この一連の作業は“弁証論治”と呼ばれ、中医学の最も重要な骨格をなしています。
上記の図の様に四診といわれる診察法によって、病変の原因・経過・予後を判断するとともに、患者の状態・病変の性質と部位・正気と病邪の力関係などを見極めます。
証 |
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体内外の病態とその原因を指す
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弁証 |
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四診で得られた情報を分析し、疾病の本質“証”を確定すること。(八綱弁証、気血津液弁証、臓腑弁証、病邪弁証、外感熱病弁証など)
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論治 |
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“証”によって治療原則を確立すること
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処方 |
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処方 “証”に対する漢方薬および鍼灸、気功、薬膳などを処方すること。 心理、精神、行動、運動、生活習慣などの中医養生学的な指導も含む。
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気・血・津液・精 |
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人体を構成する基本的な物質で、これらによって生命活動および臓腑・経絡・組繊・器官の生理的機能が維持される。
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薬物学 |
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中医処方に用いられる薬物は動物・植物・鉱物などの天然物で生薬、あるいは和漢薬、漢薬、中薬と呼ばれる。漢代の『神農本草経』を基礎として発展、今日に至っている。
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処方学 |
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中医学方剤処方は、いくつかの生薬の組み合わせからなる複合処方であり、紀元前から様々な病態に対して、数多くの処方が創案され、その名称と治療効果の優秀さゆえに、後世まで長く伝えられた処方も数多くある。最たる名著は『傷寒雑病論』である。
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参考文献
1) 関口善太著.やさしい中医学入門.東洋学術出版社,1993
2) 趙基恩・岩谷典学.現代中医診療の手引き.医歯薬出版,1997
3) 神戸中医学研究会.中医学入門(第2版).医歯薬出版,1999
4) 安井廣迪著.医学生のための漢方医学【基礎編】.東洋学術出版社,2008