HOLISTIC HEALTH JOURNAL

ホリスティックヘルス ジャーナル

医師監修

痛みとマインドフルネス

 
前回の記事では、痛みに対応するための方法をマインドフルネスの立場からご紹介しました。
今回は、痛みに関する基礎知識をまとめた上で、マインドフルネスとの関係を説明していきます。
 
 
 
 
 
 

「教会の鐘」理論

 
 
 
痛みというのは、身体のどこかが怪我をしたり、傷ついたりしたときに起こるというのは、皆さんも納得されることでしょう。
実は17世紀にフランスの哲学者デカルトが、このことを表す「教会の鐘」理論を提唱しました。これは、身体が損傷を受けると脳が痛みを感じるということを、ロープを下から引くと教会の鐘が鳴ることに例えたものです。
 
教会の鐘はロープを強く引くほど、大きな音がなりますよね。それと同じように、身体の損傷が大きいほど痛みは強くなると考えました。
また反対に、身体に損傷が見つからなければ、痛みは生じないはずだと考えたのです。この「教会の鐘」理論は医学者の間で長らく主流となっていました。
 
 
 

ゲートコントロール理論

 
 
 
しかし、1960年代に入り、「ゲートコントロール理論」という痛みに関する新しい理論が登場し、その方が痛みをうまく説明できると考えられるようになりました。この理論では、脳の入り口には「ゲート(門)」があり、そのゲートが開いているときだけ脳が痛みを感じると考えます。
言い換えると、身体が脳に対して痛みの信号を送ったとしても、脳のゲートが閉じていればその痛みが自覚されることはないということです。
「ロープを引けば鐘が鳴る」=「傷ができれば痛みが生じる」という「教会の鐘」理論ほど話は単純ではないということですね。
 
このゲートの開閉のメカニズムはとても複雑で、どんなときに開いてどんなときに閉じるのかということについては、まだ多くの研究がなされているところです。しかし、身体だけでなく心のありよう(思考や感情)がゲートの開閉に関わっているということが徐々に明らかになってきました。
 
 
 
 

一時的苦痛と二次的苦痛

 
 
 
そこで、「痛み」を心のありようまで含めた「苦痛」という言葉を使って説明してみましょう。
「苦痛」には一時的苦痛と二次的苦痛があると言われています。
 
一時的苦痛は、身体から送られてくる痛みのシグナルです。
 
二次的苦痛は、一時的苦痛に伴う思考・感情や記憶と行った心の働きからくる苦痛です。
 
実は私たちが日常生活で感じる「痛み」には、この一時的苦痛と二次的苦痛が複雑に混ざっているのです。具体例として、事故の後遺症で慢性の痛みが残った場合を考えてみましょう。その痛みには身体の損傷からくる一時的苦痛だけではなく、事故の記憶や、今後に関する不安といった様々な心の働きから生じる二次的苦痛も含まれています。
 
ここで大切なことは、二次的苦痛は心が作り出したものであると言っても、紛れもなく実際に感じられる苦痛であるということです。
 
 
 
 

マインドフルネスが痛みに対してできること

 
 
 
 
二次的苦痛は心の働きにより増幅し、しばしば一時的苦痛よりもはるかに大きなものになります。
「この痛みはいつまで続くのだろうか」「あのとき別の行動をとっていればこんなことにならなかったのに」といった想いや感情がぐるぐると繰り返され、ときには苦痛の大部分を占めることがあります。痛みを何とか解決しようと考えれば考えるほど、皮肉にも痛みの火に薪をくべてしまうこととなり、二次的苦痛が増悪してしまうのです。
 
そこで登場するのがマインドフルネスです。マインドフルネスでは今の心と身体の状態に注意を向け、何もせず観察することを繰り返し練習します。二次的苦痛の連鎖に気づき、それ以上苦痛を焚き付けないマインドフルネスの技法を体得すれば、二次的苦痛は増幅できなくなり、自ずと軽減していきます。その後一時的苦痛が残ったとしても、それにより振り回されることのない生活を取り戻すことができるのです。
 
 

まとめ

 
 
 
いかがだったでしょうか?HHLABでは今後もマインドフルネスに関する知識や、具体的な実践方法に関する記事を公開していきます。よろしければ他の記事もチェックしてみてくださいね!
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