皆さんは、健康についてどのようなお考えをお持ちでしょうか?とかく、健康というと身体(body)のみに気を囚われがちではないでしょうか?WHOでは1947年に、健康とは、「病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが良い状態にある」ことと定義しました。さらにWHOではその後(1998)健康の定義にスピリチュアリティを入れるべきとの改訂議論が始まりましたが、各国の共通理解が得られるまで未だ事務局長預かりとなっています。
一方で、医療のレベルでは既に、1989年7月WHOにおいて「がんの痛みからの解放と積極的支援ケアに関するWHO専門委員会」が開催され、1990年に公刊された報告書でトータルペイン(身体・心理・社会的・霊的な痛み)の考え方の提唱とその対応の必要性(スピリチュアルケアを含む全人的ケア)が提言され、全人的医療という概念が既に世界的潮流となりわが国の医療界においても取り組まれてきました。
ホリスティック(Holistic)という言葉はギリシャ語で「全体性」を意味する「ホロス(holos)」を語源としています。そこから派生した言葉には、whole(全体),heal(癒す),Health(健康), holy(聖なる)…などがあり、健康-health-という言葉自体が、もともと「全体」に根差しています。
人間を「体・心・気・霊性」等の有機的統合体としてとらえ、社会・自然・宇宙との調和にもとづく包括的、全体的な健康観に立脚する医学、すなわち人間をまるごと全体的に見る医学をホリスティック医学と称されています。これは病気だけに限定されるものではなく、人生の生老病死にかかわるあらゆる分野の「癒し」も関連しています。
従ってホリスティックヘルスとは、「病気でない状態が健康である」という否定的な定義や「検査結果が正常値の範囲以内であれば健康である」という消極的な定義ではありません。精神・身体・霊性・環境がほどよく調和し、与えられている条件において最良のクオリティ・オブ・ライフ(生の質)を得ている動態を健康と考える、より積極的な状態のことです。
健康とはからだ(Body)、こころ(Mind)、いのち(Spirit)の一体となった人間まるごとのものであり、からだ(Body)、こころ(Mind)、いのち(Spirit)の全体を健やかに生き生きと保つために、主体的に健康を考えるという健康観が全人的健康観です。
(日本ホリスティック医学協会)
1947年に採択されたWHO憲章では、前文において「健康」を次のように定義しています。「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。(日本WHO協会訳)WHOの健康の定義には、肉体、精神、社会という3つの要素が重要視されています。
その後、1998年の第101回WHO執行理事会において、「spiritual(霊的)とdynamic(動的)」を加えた新しい健康の定義が提案され、第52回世界保健総会(WHO総会)の議案とすることが決定されました。そして、第52回WHO総会に提出されましたが、緊急性が他案件に比べて低いなどの理由で、実質的な審議入りは行われないまま、採択が見送りとなりました。
さらにその後も「国や文化によって異なる問題なので、早急に国際的に共通の認識にするのは難しい」「健康の定義の変更は基本的な問題であるのでさらに時間をかけて議論する必要がある」ということで、「スピリチュアル」を健康の定義に加える案件は事務局長預かりとなり、今日に至っています。
監修 吉田 紀子(医学博士)プロフィールを見る