今回の記事シリーズではストレスについて整理し、マインドフルネスがストレスへの対処に果たす役割について説明しています。
前回ストレスに関する用語の整理をしましたが、今回の記事ではストレスによる影響を互いに受けている心と身体のつながりについて見ていきます。
ストレスとストレス反応
「ストレス」とはストレッサーによる刺激を身体や心が受けとめた状態、「ストレス反応」とは、ストレスに引き続いて身体や心が起こす反応のことをいうのでした。
「ストレス」には身体的ストレスと心理的ストレスかあり、「ストレス反応」にも身体的ストレス反応と心理的ストレス反応があります。
ここで不思議なことは、
A.身体的ストレスのあとに心理的ストレス反応が起こることがあり、反対に
B.心理的ストレスのあとに身体的ストレス反応が起こることもあるということです。
A.の例としては、
熱いものに手が触れたあと、おどろく
B.の例としては、
財布を盗られたことに気づき、心臓の鼓動が速くなる
といったものがあります。
このような心と身体の相互作用はどのようにうまれているのでしょうか?次の段落から順を追って説明していきます。
A. 身体的ストレス→心理的ストレス反応
まず、「熱いものに手が触れたあと、おどろく」という例を使って、身体的ストレスがどのように心理的ストレス反応につながるのかを説明します。
熱いものに手が触れると、その刺激は手の感覚神経から脊髄(背骨の中にある太い神経)に入って上行し、やがて大脳皮質の感覚野と呼ばれる場所に到達します。
ここで初めて、私たちは身体のどこに熱いものが触れたかを知ることができます(知覚)。身体的ストレスの発生です。
さて、感覚野からはさらに脳内の様々な場所に神経がつながっており、脳の各部分の神経活動を活性化します。
結果として、この場合は「おどろく(覚醒する)」という形で心理的ストレス反応が現れるのです。
心の変化は脳の活動のみで説明できるほど単純なものではないと思いますが、ここでは簡単のため感覚神経と脳というキーワードで説明しました。
B. 心理的ストレス→身体的ストレス反応
今度は「財布を盗られたことに気づき、心臓の鼓動が速くなる」という例を使って、心理的ストレスがどのように身体的ストレス反応につながるのかを説明します。
まず、大脳が財布を盗られたことを認識します(心理的ストレスの発生)。すると、大脳皮質から視床下部という場所を経て、自律神経系に信号が送られます。
自律神経系は体中に張り巡らされ各臓器の働きを制御しており、交感神経系と副交感神経系からなります。これらの言葉は聞き覚えがあるのではないでしょうか。
実は自律神経は太古の昔に私たちの先祖が生き残るために発達したものと考えられています。
天敵に襲われるなど生命が脅かされた際にすぐに闘ったり、逃げたりするためには、心拍数・血圧・呼吸数などを一気に上昇させ、身体の準備を整える必要があります。
このために一役買っていたのが交感神経です。交感神経によって引き起こされるこれらの反応を「闘争/逃走反応」と呼びます。
一方、天敵が去ってもいつまでも臨戦状態だと身体が疲れてしまいますので、身体の状態をもとに戻す必要があります。このために働くのが副交感神経です。
幸せなことに、現代において闘ったり逃げたりする機会はほとんどなくなりましたが、昔の名残として、今もストレッサーに出会ったときには交感神経が活性化し、身体に変化が起こるのです。
「財布を盗られたことに気づき、心臓の鼓動が速くなる」というのも、そのような反応の一部と考えることができます。
自律神経の他にも内分泌系(ホルモン)や免疫系が作用して身体的ストレス反応が起こるされていますが、今回は単純化のため自律神経系のみ紹介しました。
まとめ
今回はストレスとストレス反応というキーワードを通じて、身体と心がどのようにつながっているのかを説明しました。
次回の記事では、今回までの知識を使いつつ、ストレスがどのように健康障害を引き起こすのかについて説明していきます。