ストレスを解消する
現代は科学技術の進展などにより生活の質が向上した反面、自然環境の破壊などにより地球環境の悪化が徐々に進んでおり、持続可能性が不安視されるなど様々な問題が生じています。地球環境についてはさておき、我々人間の心身に限っていえば、生活習慣病やガンが増加し、心身に及ぼすストレスが原因の病気が増えています。
心の病においても薬剤に頼ることが多く、ストレスの解消や根本の解決にはつながりません。
また、病院に行けば医師に自分の心身を任せっぱなし、いわば他人任せ・受け身の治療となっていないでしょうか?
気功法は、他人に施してもらうのではなく、自分自身で行うことができるセルフコントロール法で人間本来が持つ″自然治癒力″を高めることができるものなのです。医療というものは元来、自己責任と専門家による支援というこの二つの一方だけでは成り立たないものだったにもかかわらず、近代化の進展の過程でいつの間にか一つになってしまったのです。自分で行うということを重要だと考える人にとっては、気功はとてもよい方法であるといえます。
気功法は大脳皮質の働きを抑制し、全身をリラックスさせるため、感情をほどよくコントロールすることを可能にします。つまり、日ごろストレスとなっていることも、この訓練によってはストレスと感じなくなるのです。一時でも世の中の面倒なことから離れることができ、自分をも忘れることができるのです。つまり、日常のわずらわしさを、わずらわしいと思わなくなるわけです。
味気ない毎日を送っていると感じている人でも、訓練によっては感謝、愛情、満足、幸福などの気持ちを持つことができるようになってきます。
さらに、宇宙と一体になったような、神仏に抱かれたような三昧境(雑念を離れた境地)にまで達することも可能です。そこまでは望まなくても、毎日を気持ちよく生活でき、仕事も家事もテキパキやれるような心身の状態に変わっていくのはそう難しいことではありません。
エネルギーを補う
病気は「気を病む」と書きます。また、「病は気から」とも言われていますが、現代人は特に“無気力”であり、いつも気を病んでいるといっても過言ではありません。自殺が増加し、生活習慣病の中でもガンが増えています。さらに動脈硬化、高血圧、脳血管障害(脳卒中)、心臓病、糖尿病、胃、十二指腸潰瘍、肥満、アレルギー病など、いずれもまさに“気の病”といえるでしょう。
現代人は栄養を摂り過ぎているといわれますが、栄養は過剰でも、気は欠乏しているのです。気は血(血液)を動かすエネルギーでもあります。したがって、気が不足すると血液の循環が悪くなるのです。このような血液の滞りを東洋医学では、「瘀(お)血」と呼んでいます。現代人の多くの病気は、この瘀血を治す気が不足していることが原因と考えられます。
医学博士の千島喜久男先生も、『ガンの疫学と血液』という本の中で、「ガンのほんとうの原因は気・血・動の不調和である」と書かれています。戦前はガンの発生率は低かったのですが、戦後、生活が豊かになるにつれて栄養過剰となり、ガンが多発するようになりました。これはやはり、血液を動かす気が不足しているからではないでしょうか。
つまり、戦前の病気のように栄養(血)を補う治療では現代病は治せず、気を補う訓練こそが求められているのです。
参考文献:
- 林茂美・林誠著.らくらく気功健康法―だれにでも手軽にできて効果抜群.永岡書店,1990
- 関口善太著.〈イラスト図解〉東洋医学のしくみ.日本実業出版社,2003
- 安井廣迪著.医学生のための漢方医学【基礎編】.東洋学術出版社,2008
- 平馬直樹・浅川要・辰巳洋著.オールカラー版 基本としくみがよくわかる東洋医学の教科書.株式会社ナツメ社,2014
- 仙頭正四郎著.最新 カラー図解 東洋医学 基本としくみ.株式会社西東社,2019