前回の部屋では「チーム」を観る(観察し介入する)眼(視点とモデル)をご紹介しましたが、今回は「そもそも人間は集まったからチームとしての活動がすぐにできるのだろうか?」という点を掘り下げたいと思います。
4月には皆さんの職場にも新人やキャリア採用の職員が入職されると思います。そのような人財がどの様にしてチームの一員として成果を出せるようになるのか?その視点でチームと人財を見てみたいと思います。

私が組織開発の学者、そしてプロセスコンサルタントとして尊敬している故エドガー・シャイン博士はその著書「Helping ~人を助けるとはどういうことか?」という著書の中で
チームワークについて言及しています。
「チームワークとは、一緒に働かなければならないグループの
全メンバーを含めた、相互の多様な支援関係の状態である」
そして、 「チームメンバーは最初から“チームの一員”として機能できるわけではない」
なぜなら、チームに参加する個人がまず直面するのは「能力」や「スキル」以前に、心理的・精神的な4つの懸念事項であると指摘しています。
その4つの精神的な懸念事項とは
1.私はどんな人間になればいいのかこのグループでの私の役割は何か
2.このグループで、私はどれくらいのコントロール、あるいは影響を及ぼすことになるか
3.このグループで、私は自分の目標、あるいは要求を果たすことができるか
4.このグループで、人々はどれくらい親しくなるだろう
この4つの問題を解消して(支援して)相互の多様な支援関係ができている状態そのものを「チームワーク」と定義しています。

ではその4つの精神的な懸念事項とはどのようなものなのでしょうか?
チームに参加する個人が直面する精神的な4つの懸念事項
- 私はどんな人間になればいいのか →(このグループでの私の役割は何か)
・自分は 何を期待されている存在なのか
・何をすれば「ここにいていい」と認められるのか
※役割の不明確さは、不安・遠慮・沈黙を生む
- 私はどれくらいのコントロール/影響力を持てるのか
・意見を言っていいのか
・決定にどこまで関われるのか
・発言は歓迎されるのか
※影響力が感じられないと「従うだけの人」になる
- 私は自分の目標・要求を果たすことができるのか
・自分の成長が得られるか
・専門性を発揮できるか
・働きがい・達成感が得られるか
※チーム参加が自己犠牲になると、関与は続かない
- このグループで、人々はどれくらい親しくなるのか
・どこまで本音を出していいのか
・感情を見せても大丈夫か
・失敗しても関係は壊れないか
※ここが「心理的安全性」の土台
つまりチームワークとは
✔ 個人の4つの不安が
✔ 関係性の中で支援され
✔ 安心して役割を果たせる状態
新しくチームに参加したメンバーは、
この4つの基本的な精神的な問いが支援されてはじめて、
「チームの一員」として機能し始めるわけです
独り言

私がコンサルタント会社にキャリア採用で入社したのは、32歳の時でした。
行動科学をコアテクノロジーに、組織開発(OD)と人材開発を主な事業として展開する、社員400名ほどの会社です。
大学時代、私は行動科学のゼミに所属していて、そのゼミの先輩がすでにその会社で働いていました。
入社が決まったとき、その先輩から最初にかけられた言葉が、今でも強く印象に残っています。
「ここでは、まずは How to live だからな」
正直、何を言われているのかまったく分かりませんでした。
「はい」とだけ返事をして、深く考えることもなく、翌日から出社しました。
ところが、出社してみると――
仕事があるわけでもなく、すぐに何かができるわけでもありませんでした。
毎朝8時に出社し、本社の人たちに挨拶をしながら、誰でも自由に座れる大きなテーブルの椅子に腰掛ける。
そして、そのまま一日を過ごす。
それが、10日ほど続きました。
今思い返しても、あの時間はかなり辛かったですね。
当時の私の心境は、まさにエドガー・シャインが語る「4つの精神的な懸念事項」のど真ん中にいました。
――自分はここで何者なのか
――影響を与えられるのか
――成長・達成できるのか
――安心して関われるのか
そのすべてに、確信を持てないまま、ただ椅子に座っていたのです。
後になって分かったことですが、コンサルタントという職業は、芸能人で言えば「タレント」のような存在です。
新人が入ってくるということは、社内に競争相手が増えるということでもあります。
当時の社内には、「新しく入った人をみんなで育てよう」という文化は、正直あまり感じられませんでした。
むしろ、今だから言えますが、いじめのように感じる経験も少なくありませんでした。
それでも、毎朝早く出社し、挨拶だけは欠かさず続けていました。
すると10日ほど経った頃から、少しずつ変化が起き始めます。
営業の人から声をかけられるようになり、
「企業訪問があるんですが、一緒に同行しませんか?」
そんなふうに、少しずつ関係性が生まれていきました。
その年、私を含めてキャリア採用で入社した人は24名いました。
しかし、3年後にその会社に残っていたのは、わずか5名だけでした。
辞めていった人たちの多くは、シャインの言う「4つの懸念」を乗り越えられなかった。
あるいは、自分から積極的に社内の人と関係性を築くことができなかった。
今振り返ると、そう感じます。
新しく組織に入った人間には、「待つ」だけでは足りない。
自ら生きていく努力、そして「活かされていく」ための努力が必要なのだと、あのとき痛感しました。
そしてようやく、あの先輩の言葉の意味が、少し分かった気がしたのです。
「ここでは、まずは How to live だからな」
仕事のやり方の前に、
成果の出し方の前に、
まず、この場所でどう生きるのか。
あの言葉は、決して抽象的な精神論ではなく、
とても現実的で、切実なメッセージだったのだと思います。






