「良薬は口に苦し」
「良薬は口に苦けれども病に利あり。忠言は耳に逆らえども行いに利あり。」という孔子の教えが残っています。苦い薬も、聞きたくない言葉も、心に逆らう存在ですが、その受け止め方によって有難くなるというわけですね。
ところで、外出の際に雨が降り出す、電車の事故で会議に遅刻する、といったアクシデントや、仕事で意地悪をされたり、悪口を言われたりといった人間関係の不都合など、私達の日常は心に逆らう出来事の連続です。このようなアクシデントや不都合によって私達の心は怒りや悲しみ、怖れなどにかき乱されるのです。
天候や事故に限らず他人の言動も、私達がコントロールできるものではありません。しかし、これら自分の外にあるものをどう受け止めるのかを私達は決めることができるのです。晴であろうが、雨であろうが、天候は誰に対しても同じですから、その良し悪しを判断する必要はありません。悪口を言った人に言い訳をしても抗議しても、その人の心の中はわかりません。放っておくことで、忘れることで、心の平穏が得られるなら、それに越したことは無いでしょう。
思いに任せぬ日々の出来事も、私達の心の対応力を高める良い修練と捉えることもできます。残された日々、悶々と暮らすことだけは避けたいものです。周りの出来事をコントロールできない以上、私達は心の在り方を工夫するしかありません。
この宇宙の中で、私達がいかに誕生し、いかに死んでいくのかは、大いなる神秘ですが、良いとか悪いとか、安易に価値判断できることではありません。この宇宙がわざわざ意地悪するために私達を誕生させたわけではないでしょう。宇宙については、神と言うか、天というか、仏というか、様々な捉え方がされてきましたが、私達の先人が宇宙の営みについて信頼していた証かもしれません。
もし、運命というものがあり、嘆いても服従せざるを得ないのなら、自分の意志でもって運命を肯定していくことが私達には許されているのではないでしょうか。
(初出:(株)ぎょうせい月刊「税」2026年10月号)






