皆さんの職場には、こんな人はいませんか
・「思いついたら、まずやってみよう!」という人
・「ちょっと待って。本当に大丈夫?」と慎重に考える人
・みんなの意見をまとめてくれる人
・困っている人に、自然に声を掛ける人
・決まったことを、黙々と実行する人
・最後まで細かなところを確認する人
同じ職場で働いていても、人によってずいぶん違います。
そして、ときには、
「 あの人とは、どうも考え方が合わない」
「 あの人は慎重すぎる」
「 あの人は、すぐ新しいことを言い出す」
「もっと早く決めればいいのに……」
そんなふうに感じることもあるのではないでしょうか。
でも、もし私たちが「合わないな」と感じている人が、実はチームにとって大切な役割を担っているとしたら……。
今回は、そんなことを一緒に考えてみたいと思います。
チームには「違う人」が必要
前回の第13回では、「職務と役割は違う」というお話をしました。
職務とは「何を担当するか」。
一方、役割とは「どのようにチームへ貢献するか」。
そして、職務分掌には書かれていない「見えない役割」が、チームには存在しているというお話でした。
今回ご紹介したいのは、ちょっと古典的ではありますが、私が最初に学んだイギリスのメレディス・ベルビン博士が提唱した「チームロール理論」です。
ベルビンは、人がチームの中で、どのように貢献するのかを研究し、その特徴を9つの「チームロール」として整理しました。
① 創造的なアイデアを生み出す人
② 冷静に評価する人
③ 専門知識を提供する人
④ 人と人をつなぐ人
⑤ 周囲を支える人
⑥ 外部から情報を持ってくる人
⑦ チームを前へ進める人
⑧ 実際に計画を動かす人
⑨ 最後まで品質を高める人

「強み」と「弱み」は、別々のものではない
ここで、とても面白いことがあります。
ベルビンは、「どのロールが一番優れている」とは考えていません。
むしろ、それぞれに強みがあり、その強みの裏側には弱みもある、と考えました。
新しいアイデアを次々と生み出す人は、創造性という大きな強みを持っています。
その一方で、細かな実行や確認が苦手なこともあるかもしれません。
最後まで細部を確認する人は、ミスを防ぎ、品質を高めることができます。
でも、慎重になりすぎると、なかなか前へ進めなくなることもあります。
つまり、
「強み」と「弱み」は、別々のものではないのです。
強みの裏側に、弱みが存在している。
この見方は、私自身にとっても、とても印象に残った考え方でした。
「あの人は慎重すぎる」は、本当に弱みなのか?
例えば、病棟で新しい取り組みを始めようとしたとします。
「患者さんのために、ぜひやってみましょう!」
と積極的に提案する人がいます。
一方で、
「ちょっと待ってください。安全面は大丈夫ですか?」
「現場の負担はどうでしょう?」
と質問する人もいます。

前者には「行動する力」があり、後者には「リスクを見つける力」がある。
どちらが正しいのでしょうか。
私は、どちらも必要なのだと思います。
積極的な人だけなら、前に進むかもしれません。
でも、見落としが増える可能性があります。
慎重な人だけなら、安全性は高まるかもしれません。
でも、新しいことがなかなか始まらないかもしれません。
だからこそ、
「進める人」と「立ち止まって考える人」が同じチームにいることに意味があるのではないでしょうか。
一見すると、二人は「合わない人」に見えるかもしれません。
でも、もしかすると、そうではないのです。
見ているものが違う。
視点が違う。
視座が違う。
そして、チームへの貢献の仕方が違う。
私は、そこにチームで働く面白さがあるのではないかな、と思っています。
「違う人」をどう見るか
医療や介護の現場には、多くの専門職がいます。
患者さんやご利用者さんの課題も、身体だけではなく、生活、家族、心理など、さまざまです。
だから、一人の専門職だけでは解決できないことがあります。
異なる専門性を持つ人が集まり、さらに、その中に「考え方の違う人」がいる。
だからこそ、物事を多面的に見ることができるのかもしれません。
例えば、
「細かすぎる人」は、チームの品質を守っているのかもしれません。
「慎重すぎる人」は、リスクを見つけているのかもしれません。
「思いつきばかりの人」は、新しい可能性を持ち込んでいるのかもしれません。
「人に気を使いすぎる人」は、チームの関係性を守っているのかもしれません。
もし、職場で「どうして、この人はこんなことを言うのだろう?」と感じる人がいたら、一度だけ、
「この人は、チームの何を守ろうとしているのだろう?」
と考えてみるのもいいかもしれません。
そうすると、今まで「ちょっと困った人」に見えていた人が、
「もしかすると、チームに必要な人なのかもしれない」
と、少し違って見えてくることがあります。
強いチームは「似た人」ではなく「補い合える人」でできている
ベルビンのチームロール理論を学んで、私自身があらためて感じたのは、
「人は違っていていいんだ」
ということでした。
いや、もう一歩踏み込むなら、
「違うからこそ、チームになる」
ということなのかもしれません。
大切なのは、
「自分は何が得意なのか」
「自分はチームに何を提供できるのか」
そして、
「自分にはない強みを持っている人は誰なのか」
を知ることなのだと思います。
第13回では、チーム活動において、
「私は何をする人か」から、
「私は何を提供できる人か」へ、
というお話をしました。
今回のベルビンは、その先の問いを投げかけてくれているように思います。
「では、あなたとは違う強みを持っている人は、チームの中にいますか?」
皆さんの職場を、少し思い浮かべてみてください。
そして、いつも「ちょっと苦手だな」と思っている人のことも、少しだけ思い浮かべてみてください。
その人は、あなたには見えていない何かを見ているのかもしれません。
あなたにはない強みを、持っているのかもしれません。
もしかすると、その「違い」こそが、チームに必要なのかもしれません。
独り言
私自身、若い頃は「自分が何をするか」ばかりを考えていたように思います。
しかし、チームで仕事をする経験を重ねる中で、
「自分が何をするか」ではなく、
「このチームに、自分は何を提供できるだろう」
と考えるようになりました。
そして、もう一つ大切なことがあります。
「自分にできないこと、苦手なことを、誰ができるのだろう」
と考えるようになったことです。
私は、組織開発(OD)と人材開発(HRD)を主たる領域とするコンサルタント会社で、師匠と仰ぐ上司であり先輩コンサルタントとチームを組んだ経験があります。
そこには、さまざまな個性を持ったメンバーがいました。
一人ひとりが違う視点から課題を捉え、その洞察を持ち寄る。
そして、行動科学、組織学、社会心理学などの理論を共通のバックボーンとして、みんなで課題に挑戦しました。
その仕事は、ダイナミックで、魅力的で、何よりワクワクするものでした。
振り返ってみると、単に「違いを認め合った」だけではなかったのだと思います。
違う個性(強みと弱み)を持った人たちが、それぞれの強みを持ち寄りながら、共通の目的と、共通の理論的なバックボーンを共有していた。
だからこそ、一人では見えなかったものが見え、一人ではできなかったことが、チームならできたのだと思います。
皆さんはどうでしょうか。
仕事を通じて、多様なメンバーと協働しながら、共通の理念や、プロとしてのバックボーンを共有し、ワクワクするような仕事をした経験はありますか。
もしかすると、「良いチーム」とは、仲の良い人たちが集まったチームというより、違いを持った人たちが、それぞれの強みを持ち寄れるチームなのかもしれません。
違うからこそ、互いに学び合える。
違うからこそ、一人では見えないものが見える。
違うからこそ、一人ではできないことができる。
そんなチームを、私は「強いチーム」と呼びたいと思っています。







