皆さんは職場で、
「それは私の仕事ではありません。」
という言葉を耳にしたことはありませんか。
もちろん、担当業務をきちんと果たすことは大切です。しかし、本当に強いチームは、それだけでは成り立ちません。
医師、看護師、介護士、リハビリスタッフ、薬剤師、事務職員…。
医療や介護の現場には、様々な専門職が集まり、それぞれが専門性を発揮しています。
しかし、患者さんやご利用者さんは、職種ごとにサービスを受けているとは感じていません。「この病院」「この施設」という、一つのチームから支援を(サービスを)受けていると感じています。だからこそ私たちも、「自分の仕事」だけではなく、「チームの成果」を考えることが大切だと思います。

職務と役割は違う
ここで一つ、大切なことがあります
職務と役割は同じではないということ
職務とは、「何を担当するか」です
一方、役割とは、「どのようにチームへ貢献するか」です
例えば、同じ看護師でも、
患者さんを安心させることが得意な人
新人を育てることが得意な人
多職種をつなぐことが得意な人
チームの雰囲気を明るくする人
それぞれが違った形でチームに貢献しています。
これらは職務分掌には書かれていません。
しかし、チームにとっては欠かすことのできない、大切な役割だと思います。

良いチームには「見えない役割」がある
組織やチームを研究している心理学では、公式な役割だけではなく、「非公式の役割」が存在すると考えられています。
例えば、
・困っている人へ自然に声を掛ける人
・対立した意見を上手にまとめる人
・最後まで粘り強くやり遂げる人
・新しいアイデアを生み出す人
・場の空気を和ませる人
このような役割は、辞令や職務分掌では決まりません。
その人らしさや強み、そして周囲との関係性の中から自然に生まれてくるものです。

チームの力は、人数だけでは決まらない
一人ひとりの強みが生かされ、お互いの役割が機能しているかどうかで、大きく変わります。
「私は何をする人か」から「私は何を提供できる人か」へ
強いチームでは、
「これは私の仕事ではありません。」
よりも、
「今、このチームに必要なことは何だろう。」
という視点で行動する人が自然に増えていきます。
役割とは、資格や肩書きで決まるものではない
その場で、自分がチームへどのような価値を届けられるか。
それが役割だと思います。
役割は育っていく(学習し成長していく)
役割は、一度決まったら変わらないものではありません。
新人の頃は教わる立場だった人が、やがて教える立場になります。
支えられていた人が、今度は誰かを支える人になります。
役割は、与えられるものではない
周囲との関わりの中で育ち、経験を積む中で少しずつ形になっていくものです。
だから、「自分には役割がない」と思う必要はありませんし、誰にでも、その人だから果たせる役割があります。
そして、その役割は、チームとの関わりの中で少しずつ育っていくのです。
今回の問いかけ
皆さんは、職場でどのような役割を担っているでしょうか。
そして、周囲の人は、皆さんにどのような役割を期待しているでしょうか。
少しだけ立ち止まって考えてみてください。
役割には優劣はありません。(責任の強弱はあると思います)
大切なのは、自分らしい役割を知り、それをチームの中で発揮することだと思います。
皆さんの職場にも、新しいアイデアを生み出す人、周囲を支える人、最後までやり遂げる人、調整役として活躍する人など、さまざまな人がいるのではないでしょうか。
実は、このような「役割の違い」を体系的に研究した学者がいます。
次回は、私が最初に学んだ(やや古典的ではありますが)イギリスのメレディス・ベルビン博士(組織行動学・心理学)が提唱した「チームロール理論」をご紹介します。
自分自身の強みや、職場の仲間を見る視点が、きっと少し変わるはずです。

独り言
私がコンサルタントとして新しいキャリアをスタートしたのは32歳の時でした。
何もできない新人コンサルタントとして仕事を始め、ようやく少しずつ講座を担当できるようになった39歳頃(成長が遅いですね 笑)、私は一人の師匠とチームを組む機会をいただきました。
最初は、文字どおり「かばん持ち」です。
企業へ同行し、社長や役員のお話を伺い、担当者との打ち合わせに同席し、講座ではサブコンサルタントとして師匠を支えることが私の役割でした。
ある日の講座が終わった帰り道、師匠が静かにこう言いました。
「もし私が病気やケガで急に講座へ立てなくなったら、この講座は君がやるんだよ。それがサブコンサルタントの役割だから。」
私は一瞬、言葉を失いました。
それまで私は、
「メインがいるから、自分はサブとして与えられた役割だけを果たせばいい。」
そんなふうに考えていたのです。
しかし、その日から私の考え方は大きく変わりました。
(講座運営中の緊張感が10倍になっていました・・笑)
「もし自分が任されたら、どう講座を進めるだろう。」
「自分なら、参加者へどんな価値を届けられるだろう。」
そう考えるようになったのです。
今振り返ると、師匠は「サブ」という立場を教えたのではなく、「いつでもチームを支えられる人になれ」という覚悟をメッセージしたのだと思います。
その後、私もメインコンサルタントとして多くの講座を担当するようになりました。
それでも今なお、「師匠を超えられただろうか」と自問自答する日々は続いています。







