HOLISTIC HEALTH JOURNAL

ホリスティックヘルス ジャーナル

人とチームを学ぶ部屋~医療や介護の組織で楽しく働くために~

第12回 「私たちは何のために存在するのか?」

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前回のコラムでは、「規範は変えられるのか?」について考えてきました。

職場には暗黙のルール(規範)があり、その規範が行動を生み、やがて組織文化を形成していく。
しかし、その規範が患者さんや御利用者さんの価値につながっていない場合、私たちはその規範を見直し、新しい規範を創造していく必要があるという話でした。

では、その時に一つの問いが生まれます。
私たちは、何を基準に規範を変えるのでしょうか?

何を残し、
何を手放し、
どこへ向かえばよいのでしょうか?

その答えの一つが、今回のテーマである
Mission(使命・存在意義)」です。

 

 

■Missionとは何か?

Missionという言葉は、企業や病院の理念に書かれている少し立派な文章のように聞こえるかもしれません。

しかし本来Missionとは、

「私たちは何のために存在しているのか」

という根源的な問いへの答えです。

 

やや古典的ではありますが、経営者であり組織学者であったチェスター・バーナードは、組織が成立する条件として、

 

①共通目的

②協働意思

③コミュニケーション

Chester L. Barnard

(Chester L. Barnard)
 

の3つを挙げています。

私はこの中でも最初の「共通目的」が最も重要だと思っています。

 

なぜなら、人は目的が見えないと協働できないからです。

役割が明確でも、仕組みが整っていても、関係性が良くても、

 

「何のために」が失われると、人は次第に作業をこなす集団になっていきます。

 

もちろんルールや秩序は必要です。

ただ、その判断の根底に患者さんや利用者さんへ提供できる価値(顧客価値)が存在していなかったとしたら、いつの間にか私たちは“目的のための手段”ではなく、

“手段そのもの”を守る組織になってしまうかもしれません。

ドラッカーも言っています“The purpose of a business is to create a customer.” (ビジネスの目的は顧客の創造である)これを現代風に言うと、「組織の本質は顧客価値の創造である」と・・・

本来、規範も制度も会議も役割も、すべてMissionを実現するための道具と言えます。それは、目的ではありません。

 

 

■チームのMissionは、毎日の仕事に現れる

私は良いチームには共通点があるように感じています。

それは、Missionが壁に掲げられているのではなく、行動に現れていることです。

 

例えば、

・忙しくても患者さんへの説明時間を確保する

・困っているスタッフを自然に支援する

・ミスを責めるのではなく学習に変える

・専門職同士が上下ではなく価値・機能・役割で対話する

 

こうした日々の選択の積み重ねが、

「私たちは何のために働いているのか?」

を表現しているのではないでしょうか

Missionとは文章ではなく、行動そのものなのかもしれません。

 

■皆さんへの問い

皆さんの職場では、普段どんな言葉が飛び交っていますか?

その言葉は、本当に患者さんや利用者さんの価値に繋がっていますか?

もし明日から一つだけ規範を変えられるなら、何を変えますか?

その答えの中に、皆さんの職場のMissionが隠れているかもしれません。

 

独り言

 

私は磯釣り(夜釣り)が好きです。

夜の磯に立っていると、波の音や風の音が絶えず流れ、真っ暗で、時間や方向の感覚が失われることがあります。

しかし、しばらく一人で竿を握っていると、少しずつ分かってくることがあります。

潮の流れも、風の向きも、天気予報やタイドグラフ通りにはいかない。

だからこそ、五感を研ぎ澄ませて、変化や危険や機会を感じ取る必要があるのです。

そんな時、ふと思い出す言葉があります。

 

17世紀の釣り文学『釣魚大全 The Compleat Angler or the Contemplative Man’s Recreation』(あえて日本語でイメージするなら(意訳するなら)「釣りという営みを深く味わい、技と心の両面で成熟していく釣り人」)の著者アイザック・ウォルトンは、

 

 

“No man is born an angler.”(釣り人は生まれつきではない) 

と書きました。

釣り人とは、経験と観察と静かな思索によって“育っていく存在”だという意味です。

夜の磯で立ち止まり、

「今日の目的は何か?何を狙い、どこへ向かうのか」

と自分に問い直す時間は、まさにウォルトンが言う“静思する人・瞑想する人(Contemplative Man)”そのものだと感じます。(少しかっこ付け過ぎ・・?)

目的があると判断できます。目的が無いと流されます。

 

これは瀬渡しの船頭さんとのチームワークでも同じです。

今日の風はどうか、潮汐はどうか、何を狙うのか、どこを狙うのか?

短い会話の中で目的を共有することで、同じ方向に向かうことができます。

 

組織やチームも少し似ているのかもしれません。

忙しさや前例に流されそうになった時、

私たちは時々立ち止まり、

「私たちは何のために存在しているのか」 

と問い直す必要があるのだと思います。

釣り人が目的を見失うと海に流されるように、

組織やチームもMissionを見失うと、環境の波に流されてしまうのかもしれません

そして組織もまた、

“Incomplete” から “Compleat” へと育っていく存在なのだと思います

 

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