この回からチームについて学んでいきますが、その前に(前提として)行動科学を活用した組織へのアプローチ(組織開発~Organization Development)について紹介したいと思います。組織開発とは直訳すると〝組織発達〟となるんですが、1960年代に米国から日本に導入され、当初は“組織づくり”と訳されたこともあります。

組織開発という領域はまだ100年も経っていませんが、その歴史はいつか後述するとして、組織開発については様々な書籍があります。ここでは入門的で分かり易い(読みやすい)書籍として南山大学人文学部心理人間学科の中村和彦教授の入門 組織開発」を推薦致します。
組織開発の定義(一般的に言われている事の一例・・・様々ある) 「組織開発とは、組織の健全性、効果性、自己革新力を高めるために、組織を理解し、発展させ、変革していく、協働的で計画的な過程である」
「組織開発とは組織の健全性・・効果性・自己変革能力を高めることを目的に、行動科学の知識や技法などを用いて、組織の理念、戦略、構造、制度 等、(ハード面)、および組織風土、リーダーシップ、コミュニケーション・人間など(ソフト面)の両面へ働きかける、計画的で体系的な諸活動である」
また組織開発にはいくつかの視点(アプローチの観点)があるように感じています。
1, 個人へのアプローチ
2, 二人間の関係へのアプローチ
3, チームへのアプローチ
4, チーム間の関係へのアプローチ
5, 組織へのアプローチ
前章までは個人や二人間へのアプローチという位置づけで、今回は3の目の「チームへのアプローチ」として位置付けたいと思います
チーム(集団)を考える2つの側面
氷山モデル→海の下に隠れた「プロセス」が結果の質に影響する
組織開発で基本となる概念は「コンテント」と「プロセス」です。
「コンテント」とは何が話され、何が取り組まれているかという仕事の内容的な側面。
「プロセス」とは、その話をしている・仕事している中で、人と人との間で起こっているすべての事(諸要素)で、チームや組織の中の人間的側面を映し出す事柄の事です。
氷山にたとえると、会議などで話されている内容は海面上に見える「コンテント」で、議事録に記録として記述されます。それに対して「プロセス」は議事録には記述されることは無く、その会議の場で実際にお互いの間で起こっていること。発言者や参加者の表情・語気・語調・体の動きその他コミュニケーションの様子。そうしたお互いの影響関係は、氷山の海の下に隠れた部分のように目を向けられにくいという特徴を持っています。しかし、その海の下に隠れた「プロセス」こそが、結果の質に影響するという考えです。
「会議でどのように話されていたか、自由に打ち込んでアイデアを話せたか?1人ひとりが決定に参画できていたか、納得度はどうだったか?」などのプロセスが、会議で決定されたことの質、つまり決定されたことが実行されるかどうか*に影響してきます。
* 結果の質

プロセスを見る眼
では、どうやったら海の下に隠れているプロセスを見ることが出来るのか?理解することが出来るのか?
それには3つの視点での観察が先ずは重要となってきます
プロセスをつかむデータ、手がかり、視点は…
例えば会議の場で考えると
◆参画面
発言度合、話した時間、話題提供、口火をきる、打込む、突きこむ、無関心、ながめている、ひよりみ、妥協、あきらめる
<手がかり>
目つき、目くばり、表情、ジェスチャー、まわりへの反応、ひとに力を貸す
同意者を求める、反対する、かけ声だけ、けしかけだけ、資料を見てるだけ
椅子をひく、身をのり出す、人間にものをいう、空間にものをいう
◆コミュニケーション面
人間関係、相互理解、防衛的or支持的、開放的or閉鎖的
誰は誰に関心なのか・または無関心なのか、誰は誰に反応するのか無反応なのか
誰は誰の話にのるのか・乗らないのか、誰は誰に挑戦的なのか友好的なのか
<手がかり>
使う言葉が儀礼的なのかザックバランなのか、語気、語調、論理のやり取りだけなのか感情も表出しているのか、一方通行的なのか対面的なのか、全体もちまわり的なのか自発的なのか
◆雰囲気面
不安、自由、緊張、ぬるま湯的、凝集(まとまっている)、ばらばらな、白けている、もえない、いらいらしている、バイタルである、リラックスしている
<手がかり>
あくび、居眠り、落書きしている、メモとりする、活字を読むだけ、言葉が聞こえてくるだけ、目の位置が天井、床、 本気なのか?ごっこ的なのか? 沈黙、いつも同じ席に座る、誰と誰はいつも隣同志、自由に席をかわる、だらだらした長い発言をする

チームメンバーは上記の様な視点でプロセスを観察して、介入することによってチームの効果性・生産性を高めることが求められますが、先ずはそのプロセスに気づくこと・意識する事が大事だと思われます。
ところが・・・ 実際の会議の場では、かなり意識してプロセスを見ることをしないと、どうしてもその場の議題(Agenda)に気を取られ、プロセスが見えなくなってしまいがちです。 「なんだか、今日の会議は上手くいかないなあ」と感じたら、議題に耳を塞いですこしプロセスの観察に集中する事も重要かもしれません。
独り言

組織開発コンサルタントの癖として(研修会場やProject会議の会場にてプロセスの観察から)長年、人財開発やProject会議の講師やファシリテーションを実践していると 研修の会場やProject会議の会場に入室してくるメンバーを観察するようになってきます。
私自身はだいたい1時間前には会場に入り、会場の環境を整備してメンバーを待つようにしています。
そこへ、メンバーが入室してくるわけですが、そのプロセスを観察していると様々な特徴が見えてきます。
まず見えてくるのは「座る位置」です。
「一般的な傾向として」
・意欲的なメンバー→講師の席から2番目の列(席)に座る傾向
・あまりやる気が無い、無関心なメンバー→一番後ろの列(席)に座る傾向
・遅れてきたメンバー→一番前の列(席)に座る傾向(そこしか空いていないから)
・講師をやり込めたいと思っているメンバー→一番前、または一番後ろの列(席)
・メンバーに範を示したいTOPマネジメント・Projectリーダーなど→一番前の列(席)
まあ私の主観的な経験からのプロセス観察ですから、皆さんに当てはまるかどうかわかりませんが、そのようにプロセスを観察していくと会議やチームの活性化のkeyを見つけられるかもしれませんね。
あなたはどのタイプですか?







