鍼灸師と気功師の違い?
鍼灸師と気功師は異なる専門職であり、それぞれ独自の技術と方法により、健康の維持増進を図るものです。
鍼灸師(しんきゅうし)
鍼(はり)と灸(きゅう)を使用して、特定の経穴(ツボ)を刺激し、体内の気(エネルギー)の流れを整えることで健康を促進します。
鍼灸の理論は伝統的な中国医学に基づいており、経絡や経穴の知識が重視されます。
鍼灸師になるためには日本では一定の教育課程を修了し、国家試験に合格する必要があります。
主に慢性的な痛みやストレス、不眠症、消化器系の問題などに対する治療を行います。
気功師(きこうし)
気功は体内の気の流れを調整し、身体と心の健康を促進するための方法です。呼吸法、動作、瞑想を組み合わせた修行法です。
気功師は、気の流れを整えたり、エネルギーを補充したりすることで、自己治癒力を高める手助けをします。
気功は自己修練として行われることも多く、他者に対する治療としても用いられますが、鍼灸のように針や灸などのツールは使用しません。
気功には、身体を動かす動功、静止して行う静功、呼吸法を重視する気功など、さまざまな流派や方法があります。
両者の共通点
<気の流れの調整>
両者とも、気の流れを整え、身体のバランスを改善し、健康を促進することを目的としています。
<伝統的な理論>
どちらも伝統的な中国医学の理論に基づいており、経絡や経穴の概念を重視します。
両者の相違点
<アプローチの方法>
鍼灸師は針や灸を使用して物理的に経穴を刺激しますが、気功師は主に呼吸法、動作、瞑想を通じて気の流れを調整します。
<具体的な技術と道具>
鍼灸は具体的なツールを使用する治療法であり、気功は身体の動きや内的なエネルギーの操作に重点を置きます。
単にツボに針を刺しても効果はない
漢方薬の場合と同じように、鍼灸の針はただの道具にすぎません。
物理的な技術と知識のみでは針の効能を100%引き出すことはできません。
鍼灸は東洋医学の生理観と病理観に基づいた治療でなければ、効果は発揮できません。
針は気を送るための道具
鍼治療の最大の眼目は、経絡を流れている気に働きかけ、気を通じて効果を発揮させることにあります。
気に働きかけるのは、治療する鍼灸師です。鍼灸師が何かを使って気に働きかけるのかというと、針そのものではありません。針は金属ですから、目に見えない気を刺すことはできません。鍼灸師は自分自身の気を使って患者の邪気にアプローチします。その媒介として針を使っているのです。
鍼灸師と気功師の関係
鍼灸師と気功師はそれぞれの専門技術を持ち、異なる方法で同じ目的を追求していますが、体内の気の流れを整えるという共通の目的があります。
鍼灸師は具体的な治療具を用いて経穴を刺激する専門家です。一方、気功師は気の流れを整えることを目的とし、呼吸法や瞑想、動作などを通じて気を操ります。
両者は健康促進の目的を共有していますが、アプローチ方法や技術は異なります。
自分の気を患者に送り、経絡中を誘導して治療したい部分の気血や病邪に働きかけるのが鍼灸師であり、あくまでも使うのは「気」という点から、鍼灸師は「針を持った気功師だ」ということもできます。
このたとえを気功師に応用すると、気功師とは「針という直接的な媒介物を持たずに、気を遠隔操作する鍼灸師だ」と考えてもいいでしょう。
参考文献:
- 林茂美・林誠著.らくらく気功健康法―だれにでも手軽にできて効果抜群.永岡書店,1990
- 関口善太著.〈イラスト図解〉東洋医学のしくみ.日本実業出版社,2003
- 安井廣迪著.医学生のための漢方医学【基礎編】.東洋学術出版社,2008
- 平馬直樹・浅川要・辰巳洋著.オールカラー版 基本としくみがよくわかる東洋医学の教科書.株式会社ナツメ社,2014
- 仙頭正四郎著.最新 カラー図解 東洋医学 基本としくみ.株式会社西東社,2019